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少しだけ、前の話

『次のニュースです。今日の夕方、市内のマンション一室で男子高生2人の死体が発見されました。何方(どちら)も胸部に刃物が刺さっており……』  オレにとって、恋も、愛も、バカバカしいもの。  いわゆる、「恋バナ」ってヤツに騒いで、「好きだ」って言って。自分の気持ちってヤツを武器に、人の机や下駄箱へとプレゼントを押し込む。  やってらんない。  運命の恋をテーマにした作品が溢れ返った日には、もう、映画主題歌担当の歌手が出てくるだけでイライラしてたのに。  そんなオレでさえ、恋に落ちる事があるんだから、人生なにがあるかなんて、分からない。  事実は小説より奇なり、って、よく言ったものだと思う。  でも、オレが恋に落ちた相手は、同性だった。  黒髪と碧眼が、まさに「美しい」って言葉がぴったり似合う、身長の割に頼りなく見える体格のせいで年下に見えちゃうけど、オレの1つ上。  性格は、オレみたいな、ひねくれている上に気が短い人間に言われたくないだろうけど、ちょっと良くない。でも、そんなトコもオレにとっては魅力。  あの日、彼がぶつかってきた時をきっかけに、オレは惹かれて。  気が付いた時にはもう、あれだけバカにしてた、あんなにイライラしてた恋に落ちてたんだ。

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