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長月(8)
「ええから、早 よ着替えちゃって! 時間もったいないやん」
渋る翼の手に、女生徒は半ば強引にメイド服のセット一式を押し付けた。
「恥ずかしいんやったら、見えんように男子に壁作ってもらったら?」
そう言って、暇そうにしている男子を片っ端から連れてきて、テーブルクロスに使う為に用意してあった布を数枚差し出した。
「ほら、これで囲ってもらったら見えへんやろ?」
彼女のあまりの手際の良さに、翼は思わず頷いてしまった。さすが実行委員を引き受けただけの事はある。
4枚の布で周りを囲ってもらった中で、仕方なく制服を脱ぎ始めた。
メイド服はワンピース型なので、まずはシャツもズボンも脱いでパンツ一枚にならないといけない。
いくら周りから見えないと言われても、薄い布切れで囲われてるだけのこの状態は、かなり恥ずかしい。
しかも、布を持っている男子達からは、丸見えなのだ。
取りあえず黒いニーハイを履き、それからワンピースに足を通し、上へと引き上げてパフスリーブに腕を通す。
「……いや……待って……翼、や、やばいこれ……」
「これは、アカン……」
「やらしすぎる……」
布を持ってくれている男子生徒が口々にそう言った。
翼も、絶句する。
押し付けられた時は分からなかったが、着てみると、メイド服全体が黒のシースルーなのだ。
小さな乳首も、杢グレーのボクサーパンツも透けて見えている。
「なんか……これ、スケスケやねんけど……」
「だから、ペチコートも一緒に渡したやろ? それをスカートの下に穿くの」
足元に白い布が2枚置いてある。ひとつはフリルのエプロンだ。
「ああ……これ?」
そしてもうひとつが、ミニ丈のスカートよりも丈が長いふわふわのペチコートだった。
中に重ね着することで、かなりボリューム感が出る。
なるほど、これなら下着は見えない。だけど……
「でも、上は? 丸見えなんやけど……」
「エプロン付けたら見えんやろ?」
「ああ……そっか」
女生徒に言われて、翼はエプロンを広げた。
フリルがふんだんに使われたエプロンには胸当てが付いていて、ツルツルした布は透けてない。
これなら、スクエアカットで大きく開いた胸元も少し隠すことができる。
だけど、囲った布の上から覗いている男子達の反応は違っていた。
「いや……待って……なんか、それ付けたら余計にエロいと思うのは、俺の目が腐っとんのか?」
「うん、俺も……余計にエロく見える……きっと俺の目も腐っとぉ……」
何故か、みんな顔を赤くしている。
「ちょ……エロいって、どういうことやねん。どこもエロいとこ見えてないやろ?」
そう言って、スカートの裾を持ち上げ、後ろ側を確認しようと体を捩った翼に、何故か周りの男子生徒は余計に動揺してしまっている。
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