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長月(23)*

 水野が仕掛ける激しいキスを、律は震えながら受け止めて、時折り鼻から切なげな声を漏らしている。  それなのに、二人の唇が離れると、もっととでも言うように、律の舌は水野を追いかけて差し出されていた。  二人の僅かな距離を繋ぐ唾液の細い糸が、本棚の隙間から射し込む一条の光にキラキラと煌めいて見える。 「ふふ……可愛い……」  そう言って水野は、その舌に自分の舌先を擦り合わせ、また深く口づけて、その唇は律の首筋へと下りていく。 「……ふぁっ、せんぱ……い……」  律の高い声が、静かな図書室に響いた。 「し……っ、大きい声出したらあかんよ」  水野は大きな手で律の口を塞ぎ、もう片方の手で彼のシャツの前を開き、露わになった胸に唇を寄せる。  薄い色をした小さな胸の粒に水野の舌が這わされると、律はしなやかに身体をしならせながら、塞がれている手の下でくぐもった声を漏らした。 「……っ、んっう……」  それは翼にとって、今まで見た事のない、刺激的で官能的な光景だった。  これ以上ここに居たら駄目だと頭では分かっているのに、目の前の光景に釘付けになって、しゃがみ込んだ姿勢のまま動けない。  身体の奥から突き上げてくるような熱に、腰の辺りが堪らなく疼いている。  視覚と聴覚だけで高まった興奮は、歯止めが効かないところまできてしまっていた。  水野は、片手で律の口を塞いだまま、執拗に胸の尖りを舌先で愛撫しながら、もう片方の手を、更に下へとおろしていく。  制服のズボンの上から、律の股間を撫で上げて、そのままベルトに手をかけた。  カチャカチャと小さな音を立て、前を寛がせたズボンの中へ侵入しようとする水野の手を、律の手が拒むように弱々しく掴む。 「俺のこと、嫌い?」  ――俺……?  聞き間違いかとも思うが、水野が低く囁く声も喋り方も、やはりいつもと違う。  水野の質問に、律は塞がれた手の下で、ゆるゆると首を横に振る。 「じゃあ、好き?」  それには律は答えない。ただ、濡れた瞳でじっと水野を見上げ、水野もそれに答えるように見つめ返していた。  まるで、翼には分からない会話をしているようにも思える。  口を塞いだ手を離し、水野は律の唇に噛みつくようにキスを仕掛け、律は両手て水野の首にしがみつくように抱きついた。  律のズボンの中で、水野の手が上下に動き、重ねた唇の隙間から漏れる荒い息遣いが辺りに広がっていく。 「……んん……っふ……はっ……」  水野の手は、そこで留まらなかった。  律のズボンを両手でずらしていくのが見えて、本棚の角から覗いていた翼は、慌てて顔を引っ込めた。 (――待って、待って……まさかここで最後までする気か?)  さすがにもう、これ以上はここに居られない。なんとか、ここを離れなければ。  そう思うが、強張った身体はすぐには動けなかった。  気持ちばかりが焦って、立ち上がろうとした瞬間に手が滑り、持っていた靴が床に落ちてしまう。  

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