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睦月(3)
“縁結びの水占い”
それは、今から行こうとしている神社の、水みくじ。
境内の北側に広がっている鎮守の森。そこにある池に、授与所で分けていただいた『水みくじ』を浸すと、文字が浮かび上がってくるというもの。
この水占いが当たると評判らしいのだ。
「それ、受験と関係ないし!」
と、渋る翼を、瑛吾と健が宥め賺し、三人は電車でその神社のある市街地へと向かった。
最寄り駅の改札を出て、商業施設や商店街が立ち並ぶ賑やかな繁華街の喧噪の中を、山側に約10分程歩くと、目的の神社が見えてくる。
元旦ということもあって、駅からここまでも、観光客や買い物客、そして神社へ向かう参拝客で道はいっぱいだった。
12月31日から1月3日までは周辺道路が歩行者天国になっているので、道沿いには露店が並んでいる。
拝殿に辿り着くどころか、翼は神社の手前まで来ただけで、人混みに酔ってしまっていた。
「翼、運動不足過ぎなんちゃう?」
「やかましいわ」
人の波にぎゅうぎゅうと押されながら、とりあえずお参りを済ませ、普通のおみくじを引いた。
「中吉やて……微妙やなぁ……」
おみくじの結果に溜め息を零した翼に、健がニカッと笑う。
「そんなことない。普通やん。普通が一番やで」
「そんなん言うて、自分、ちゃっかり大吉引いてるやん」
「ははっ、日ごろの行いがええからな!」
三人で笑いながら……ふと思う。――そうやな、普通が一番。
相手を想ってドキドキしたり、落ち込んだり、胸が痛かったり。そんなの苦しいだけだ。どうせ実る事のない想いを抱えているよりも、気の置けない友達と一緒に遊んでる方が、楽しいに決まってる。
いつか……いつか、翔太とも、そんな関係に戻れればいいなと思う。
「ほな、あとは鎮守の森やな!」
瑛吾は例の“縁結びの水占い”やる気満々だ。
「ホンマに行くん? 俺、どっかで座って待っててええ?」
縁結びとか、恋占いとか、今の翼にはまったく興味がなかった。
「何言 うとん、もうあとちょっとで卒業やのに、これからの恋愛運を占なわんでどうするん!」
「そうやで。それにこの辺に座るとこなんか無いやろ。待ってるだけで疲れるで」
二人にぐいぐい詰め寄られて、翼はとうとう観念した。
「分かったって、行く、行くから!」
授与所で『水みくじ』を授与してもらい、男三人で『縁結び&恋愛成就』のパワースポットへ向かう。
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