146 / 198

Growing up(2)

「あれ~! こんなとこで会うなんて、やっぱりボクら赤い糸で繋がっとんちゃう?」  ドアが開いた途端に、乗り込んできた水野の開口一番がこれだ。 「それは絶対ない」  翔太を新大阪まで送って行った日の夜に、水野には電話をして話した。────翔太と想いが通じ合ったことを。ひと言、礼を言いたかったから。 「もう、相変わらずつれないなぁ。恋のキューピットのボクにそんな言い方ないと思うわ」  真面目な顔をしてそんな事を言う水野に、翼は苦笑いを浮かべながら、その隣にいる男の人にじっと見つめられている事に気が付いた。 (──あれ?)  どこかで見た顔のような気がして、翼もその人から目が離せなくなってしまう。 「ちょっと何? 二人して見詰め合って……もしかして知り合いなん?」  水野が、そんな二人の顔を交互に見る。  自分があまりにも不躾に人の顔を見ていた事に気付いて、翼の方から先に視線を外した。 「あ……いや、すみません。どこかで会ったような気がして……」 (誰やろ……水野の友達なんかな……)  そう思いながら軽く頭を下げると、その人は突然、翼を指さして「あっ!」と声を上げた。 「──学際ん時のメイド服の子や!」  そう言われて、漸く翼も思い出す。 「あっ、あの時の!」──ナンパ男?!  三月のこんな時期でも真っ黒に日焼けしていて、何かスポーツをやっているんだろうか。白い歯が印象的で、少しタレ気味の目を柔らかく細くめて笑う。  その笑顔が──やっぱりどこかで会ったことがある? 学際の時以外にも……。何故かそんな気がしてくる。 「学際の時に知り合ったん? そやけど翼、この男に近づいたらあかんで」 「なんでや! 俺、なんもしてへんやろ」 「だって、爽馬は、可愛い男の子見るとすぐ手ぇ出すやん」 「失礼な! そんな事ないわ。てか、ちゃんと兄ちゃんて呼べって、いつも()っとぉやろ?」 (──え?)  キョトンとした表情で二人のやり取りを見ていた翼は、思わず横から口を出してしまう。 「兄ちゃんて? 兄弟なん?」 「あ、ああ、ごめん。これ、俺の三つ上の兄貴で〝爽馬(そうま)〟んで、こっちは同級生の翼や」  身長は、弟の水野の方が高い。  二人が並ぶと目元がそっくりで、笑う時に柔らかく目を細めるのも同じだった。 (そうか……だから、どこかで会った事があるような気がしたのか) 「よろしくね、翼くん」  そう言って、翼の手をさっと握ってくる。 「は、はい……」  翼の手を両手でぎゅっと握ってくる爽馬に戸惑っていると、すかさず水野が間に割って入ってきてくれた。 「だーかーらー! 爽馬! 手ぇ握りすぎ! 離れて離れて! 翼には彼氏がちゃんとおるんやから」

ともだちにシェアしよう!