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Growing up(5)
「その様子ならまだみたいやな。翼も翔太も初めてやったっけ?」
「しっ、知らん!」
(誰か、この男を黙らせてくれ!)
「大事なことやで? ほな、翼にええもんあげるわ」
そう言って、水野が鞄の中から取り出した物を見て、翼は驚きのあまり目を瞠る。
「ちょっ、こんなとこで何出してんのや」
さっと身を寄せて、周りから見えないように、翼は、自分の身体の影に水野が手にしている物を隠した。
「何って……見た事ないの? ローションと、コンドー……」
「ああああっ、言わんでええって!」
水野が最後まで言ってしまわないように、大声で言葉を被せて止める。
「ええから、それ、早 よ、しまえ」
周りの人の目があるから、早く片付けろと、そう言ったつもりだったが、水野は「そうやね……ほな、ここ入れとくから……」と言いながら、翼の鞄の中にそれを入れようとする。
「ちょっ、何しとぉ! オレのに入れてどうすんのや!」
ボディバッグを背中に斜めがけしている為に、翼は抵抗しきれなかった。水野は易々とファスナーを開け、それを中に入れてしまう。
「あれ? グラブ入ってるやん、翔太と野球するん?」
「そうや! だから、そんなもん使わへんて!」
「いやいや、スポーツで汗かいた後のセックスもええよ? ホンマはリッツと使おうと思ってたけど、初デートのお祝いやから、遠慮せんといて」
翼が、チラッと横に立っている律に視線を移せば、彼はまるで他人の振りをしているみたいに、そっぽを向いている。
「ローションな、たっぷり使 てもらいよ。絶対気持ちええから……」
「う、煩い。言わんでええから!」
「──翼!」
鞄の中に入れられた物を水野に返したくて、ショルダーを肩から外そうとしたその時、後ろからよく知った声に呼ばれて心臓が跳ねた。
「……翔太……」
翼が振り向くと、翔太は不思議そうな表情で、翼と水野、そして隣に立っている律へと、順番に視線を巡らせる。
「どうしたん? なんで良樹おるん?」
「ああ……水野とは偶然電車ん中で会 うてん。ほんで、偶然ここで律くんと待ち合わせしとったんやって」
「そうなんや……」と応えた翔太に、水野は「久しぶりやな」と、平気な顔をして笑う。翼は鞄の中に入れられた物が気になって、妙に焦ってしまうのに。
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