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Growing up(14)
キスって、相手の身体の一部と繋がるってことだったんだな……と、ふと思う。
──翔太のことを、ずっとずっと好きだった。
だけどいつも……どうしたらいいのか分からなくて。
ただ、ただ、こんな想いは誰にも知られてはいけない。特に翔太にだけは知られたくないと思っていた。
だけど本当に、ずっとずっと好きだったんだ……──
翔太の咥内の隅々まで舌を這わせ、探り求め、絡め合わせると、その感情が流れ込んでいくような気がした。
すると今度は翔太の舌が翼の咥内へ押し入ってくる。
──俺も好き。
あの時、翔太が言ってくれた言葉が、そのまま蘇ってくる。
だからキスをする時に、舌を絡め合うのか……。そんな考えが、ぼんやりと頭を過る。
言葉だけでは全ては伝わらないけれど、今こうしている瞬間の、ひとつひとつの行為が、それを補ってくれるみたいな……。
「翼……」
キスを解いた翔太の唇が、翼の耳を掠めて名前を呼ぶ。
「…………んっ」
耳に心地よいバリトンボイスが、身体を伝って腰に響く。それだけで、さっきからキスだけで熱くなっていた体温が、また一気に上昇した。
それは肌の表面だけでなく、体の奥にも火を点けて、翼は、どうしようもなく半身に熱が篭っていくのを感じていた。
そして翔太は、翼の手から、握ったままのペットボトルをそっと取り上げて地面に置くと、身体ごと覆い被さるようにして、また深く唇を重ねてくる。
翼は、無我夢中で翔太の首に腕を絡め、翔太は翼の身体を強く抱きしめて、お互いの唇を貪り合う。
太陽が西に傾き始めていて、北の山から降りてくる冷たい風が、火照った頬を擽っていく。
どこか遠くから、子供達の声が聞こえてきていた。
ドングリなどの樹木に囲まれた、この小さな原っぱの、すぐそばにある噴水広場で、誰か子供が遊んでいるのだろうか。それとも、その向こうのメイングラウンドで練習をしている、リトルリーグの子供達の声だろうか。
あまり知られていないこの小さな原っぱでも、夢中で遊んでいる子供達が突然走って入ってくるかもしれない。
誰かに見られてしまう前に、やめなければ……と、そう思う。
──それなのに……どうしよう。
キスが、気持ちよすぎて止められない。
そう思ったその時、翔太の唇が頬へと離れ、翼の耳へ移動する。
「……は……ぁ……」
耳朶を柔らかく食まれて、翼は思わず甘い声を零してしまう。
「……翼……」
そしてまた、あの声で耳元に囁かれると、ゾクゾクと背中が粟立っていく。
「……翔……たっ……ぁ」
大きな手が、背中から腰へと、服の上から身体のラインを確かめるようにゆっくりと伝い下りて、翼は喘ぐように翔太の名前を呼びながら身を捩る。
「……何?」
翔太の、少し掠れたような声が返ってきた。
「こそばい……って」
そう言ってみたけれど、それは、くすぐったいと言うよりも、ゾクゾクすると言った方が近いのかもしれない。翼が今まで感じたことのない感覚だった。
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