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Growing up(16)*
敏感になっている部分に、翔太の熱い息がかかる。
視線を下げると、翔太がそこへ舌先を伸ばそうとしているのが見えて、翼は思わずギュッと目を瞑る。
これ以上そこを刺激されたら、自分がどうなってしまうか分からない。
キスしかしてない時から、既に下半身が疼き始めて、それはもう、さっきから下着の中で形を変えている。
〝くすぐったいのか、気持ちいいのか分からない〟と思っていた行為に、翼の身体は確かに快感を覚えていたのだ。
緊張で身体を強張らせながらも、翼は待っていた。次に翔太がくれる刺激を予測して。
だけど翔太は、なかなかそこに触れてはこない。
不思議に思いながら、そっと目を開けると、翔太の視線はそこではなく、もっと下の方に注がれていた。
(──え? まさか……!)
そう思った次の瞬間、声を上げながら、翼の身体は大きく跳ねた。
「──っ、わわっ……あぁっ!」
翔太の手が、硬く形を変え、熱く疼いている翼の股間を、ズボンの上から撫で上げたのだ。
身体が跳ねた弾みで、翼の足が地面に置いてあったペットボトルを蹴り上げた。
宙に浮いたペットボトルと共に、残っていた中身が飛沫を散らし、それは二人のTシャツを濡らしてしまう。
「わ、あっ、ごめん! オレ、タオル持ってるから!」
翼は慌てて、ボディバックのファスナーを開けて、タオルを掴んで取り出した。その下に隠してあった物の事をすっかり忘れて。
「……あっ?」
水野に無理やり鞄の中に入れられたそれが、タオルを掴んで出した瞬間に、鞄の外に飛び出してしまう。
ゴムのパッケージが鞄のすぐそばに落ち、ボトルはコロコロと翔太の足元に転がっていく。
「これ何?」
「うあぁあっ! な、なんでもないっ!」
翼は、それを拾い上げた翔太の手から、なんとか奪い返そうと手を伸ばしたが、翔太は後ろへ身を引き、ボトルに貼ってあるラベルを見てしまう。
「……あぁ……なるほど……」
「な、なるほどって……誤解すんなよ! それ、さっき水野に無理やり鞄の中に入れられたやつで、オレが持ってきたんちゃうぞ」
焦りながら説明をする翼に対して、翔太は落ち着いていた。
「そっか……水野に貰ったんやな……」
そう言って、翼の手からゴムのパッケージも、そっと取り上げた。
「これ、俺が預かっとくな」
「え?」
キョトンと目を丸くしている翼に笑いかけ、翔太は、二つのアイテムを自分の鞄の中に入れてしまう。
そして、濡れてしまったTシャツを脱ぎながら、「お前も着替えろよ、風邪引くで」と、翼の方へ視線を向けた。
辺りは、夕暮れの赤い光に包まれて、北側の山から吹き降りてくる風がいっそう冷たくなってきている。
「う、うん。そやな」
相変わらず逞しく引き締まった上半身にドキドキとしながら、翼は翔太に背を向けて濡れたTシャツを脱ぎ、鞄の中から着替えを取り出した。
「……翼」
その時、不意に、座っている翼のすぐ後ろに翔太がしゃがみ込み、息がかかるくらい近い距離で名前を呼ばれた。
「な、なんや?」
何も着ていない背中に、翔太の体温を感じる。
「明日な……、俺んちに泊まりにくるか?」
「え……?……」
──なんで? と言おうとして、やめた。訊かなくても、翔太の言いたい事が分かったからだ。
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