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Growing up(17)

 **  その日の夜は、眠れたのか眠れなかったのか、よく分からない。  あれからすぐに家に帰ったけれど……。家の近くの、長い横断歩道の所で翔太と別れるまで、翼は下半身に籠った熱をやり過ごそうと、他の事ばかりを考えていた。  あんなに積極的に、翔太は自分を求めてくれたように思ったが、その本人は、どこかあっけらかんとしていて、普通に話しかけてくる。  翼は下半身が気になって歩き難かったのに、翔太は平気な顔で、いつものように大股で歩いていた。  ──もしかして……  キスをして、身体に触れられて、興奮していたのは自分だけで、翔太は何も感じていなかったのかもしれない。  だとしたら、あの時、ズボンの上からでもはっきりと分かる状態になっていた翼の股間に触れて、翔太はどう思っただろう。  そんな考えが頭を過って、翔太と別れた後は、不思議なくらい急激に身体が冷えていった。  元々翔太は、普通に女の子が好きだったはずだ。中学の時、仲の良かった女子と付き合っていたという噂も、多分、本当だったと思う。  それなのに、男である自分を好きになってくれた。──それも、翔太の本当の気持ちだというのも信じているけれど……。  実際に身体に触れて、性的な行為をしようとしてみたら──違っていた……という事なのかもしれない。 「あぁーっ! 分からん!」  浴槽に浸かっていた翼は、そう叫んで湯の中にブクブクと息を吐きながら頭ままで沈んでいく。  ──『今、兄貴は海外に旅行中だし、親は二人して知り合いの結婚式に出席するからって、明日の夜から二日間おらへんねん』  昨日、翔太はそう言っていたけれど……。わざわざ家族が居ない時に、自分を家に泊めるということは……。  ザバッと音を立てて、翼は湯から顔を上げ、「……つまり、そういう事やと思ったんやけどなぁ……」と、独り言を呟いた。  今夜、もう一度試してみて、やっぱり駄目みたいだから別れようとか言われたらどうしよう。  そんな不安が、どんどん大きくなって、昨夜は眠れたのか眠れなかったのか、よく分からなかったのだ。  ──『明日、夜の7時以降やったら、親、出かけてるから、それくらいに来いな』 『……うん、ほな夕飯食うてから行くわ』  別れ際に、そう約束した。 「ふぅー」  翼は、大きく深い溜息をつく。  そんな事を昨夜から、あれこれ悩んでいる割には、夕飯を食べた後に、こうして風呂に入っている自分は、いったい何なんだ。何度も丁寧に身体を洗って、髪を洗って、何を期待してるんだと思う。

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