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Growing up(22)

「こんなに口の周り汚すの、翼くらいや」  翔太の手が後頭部を捕らえ、引き寄せられた。 「なんで逃げるん……」 「別に……逃げてへん……」 「怖いんか?」 「怖くなんか……」  熱の籠った眼差しに囚われる。  確かに怖いのかもしれない。  いつもと違う翔太が。  その行為そのものが。  身体を繋げることで、翔太に後悔させてしまうかもしれないという事が。  だけど、情欲の色を揺らめかせるその瞳に、どうしようもなく惹かれてしまう。  頭の中で、ぐるぐると悩んでいても、本心は……翔太とひとつになりたいと願っている。  少し乱暴に唇が重なり、咥内に滑り込んできた翔太の舌も、翼と同じように甘いクランチアイスの味がして、アイスで冷たくなっていたのに、絡め合うと、すぐに熱を帯び始めた。  甘い、甘い、キスを何度も繰り返し、その合間にチョコレートで汚れた翼の口の周りを、翔太が舌で拭っていく。  そうしながら、翔太の手は肩から腕を伝い、腰へと下りてきた。 「……しょぉ……た」  翼は重ねた唇の隙間から、喘ぐように訴える。  ──昨日と同じだ。  意思を持って股間へ滑り下りようとするその手を、翼は弱々しく掴んで抵抗した。  まだキスをしただけなのに、硬く形を変えている事を、やっぱり知られたくないと思ってしまう。  こめかみに口づけて、翔太は小さく息をついて、問いかけた。 「……何?」 「さ、触ったら嫌や……」 「な? なんでや?」  翔太にとっては、予想もしていなかった訴えだった。 「は、……は……ず……ぃから」 「は? 恥ずかしい? 何がや? そんなもん、触らな先に進まんやろが?」 「──あっ、嫌や!……あかんって……あッ」  身を捩って、背を向けようとする肩を力任せに引き寄せて、翔太は嫌がる翼の股間を、無理やりズボンの上から掴む。  途端に、恥ずかしさから翼は耳まで熱くなり、翔太から顔を背けてしまう。 「なんで、恥ずかしいんや? ()うてみぃ」 「……だって! 翔太は(なん)か落ち着いてんのに、オレだけ興奮してんのが恥ずかしいんや!」  翼の言葉を訊いて、翔太は思わず吹き出した。 「何、しょうもない事、悩んでのや」  そう言って、翔太は翼の手を掴み、自分の股間へと導いた。 「……触って……俺の」  そこに手を押さえつけられて、翼は息を飲む。 「……っ」 「な? 俺もちゃんと興奮してるやろ?」

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