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Growing up(23)*
翼は、そっと視線を下へと落とした。
風呂から上がったばかりの翔太は、薄手のスウェットを穿いている。翼の穿いているハリのあるチノクロス素材のパンツに比べると、見ただけで、そこが下から布を押し上げているのが分かる。
それがどんなに滾っているのかも、手のひらに感じる熱が伝えてくる。
上から重ねた翔太の手に促されて、ゆっくりと上下に擦れば、そこはドクンと脈打ち、またひときわ硬さを増した。
「……っ」
それだけで、翼の体温は更に上昇してしまう。
「な? もうさっきからずっと興奮してる……。もっと言えば、昨日キスした時、翼がペットボトルを蹴らんかったら、あのまま止まらんかったかもしれん」
──昨日、あの時も……。
翔太も同じように、興奮してくれていた。
それが分かっただけで、すごく嬉しいのに、口は勝手に照れ隠しの言葉を選ぶ。
「……アホ……」
クスッと笑いを洩らした翔太に、もう片方の腕で抱き寄せられて、翼は逞しい肩に鼻先を埋めた。
「このまま、触ってて……」
翼の耳元に囁きながら、重ねていた翔太の手が、そっと離れて翼の股間へ移動する。
「……っ、あ」
ズボンの上から触れられただけなのに、翼のそれはピクンと震えた。翔太の指がその形を確かめるようになぞり、大きな手で包み込むように掴まれると、先端から滲み出てしまう透明の雫に下着が僅かに濡れるのを感じた。
翼は、翔太の肩先で熱い息を吐く。
手の下では翔太の猛りがどんどん熱くなっていくのが分かって、それだけで興奮して欲情が加速した。
つけっぱなしのテレビからは、よく分からないドラマのセリフが聞こえてくるけれど、何を言っているのかさっぱり分からない。
少しずつ熱を帯びていく、お互いの息遣いの方が、テレビの音よりも鼓膜を揺さぶっていた。
服の上から、緩やかに触られているだけなのに、このままだと、下着の中で呆気なく熱を解放してしまいそう。
「……も……、あかん、オレ……」
途切れ途切れに訴えると、「俺、も……」と、吐息混じりのバリトンボイスが耳元で響いた。
そして、翔太は自分に触れていた翼の手をギュッと握りしめて動きを止めさせると、小さく息を吐き出した。
「……俺の、部屋に行く?」
そっと囁かれた言葉に、翼はゆっくりと顔を上げて、翔太と目を合わせた。
いつも涼しげな切れ長の目元が、熱を纏い、翼を見下ろしていた。
──ホンマにオレでええの? 後悔せぇへん?
さっきまで悩んで、頭の中で渦を巻いていた、そんな言葉はどこかに消えた。
きっと自分も、同じように情欲に濡れた瞳で翔太を見ている。
「うん……」と、声に出さずに頷くと、翔太は逞しい両腕で翼の身体を抱きしめた。
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