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Growing up(36)

「なんか……もしかして、これ夢なんちゃうかと思って……」  笑いながら「ごめん」と続けて、翔太は翼の頬を優しく撫でた。 「何()うとぉ。それやったら自分の頬っぺた抓ったらええやろ……?」  ──夢みたいやと思ってるのは、オレの方や。と、翼は思う。 「翔太って……、いつから好きやったん?……オレのこと……」  〝ずっと前から好きやった〟  翔太は、そう言ってくれたけど、それよりも自分の方が、もっと前から翔太のことを好きだった。  ずっと一緒に居て、でもただの幼馴染として見ることができなくて。〝好き〟という気持ちばかりが、どんどん膨らんで。それが苦しかった。この想いは翔太に知られてはいけないと思っていた。  こうして両思いになって、夢みたいだと思う気持ちは、絶対に翔太よりも大きいと翼は思っていた。 「……いつから……やろな。でも多分、小学生の頃からやと思う」  ──小学生?!  返ってきた言葉に驚いて、翼は跳ねるように上体を起こし、翔太の顔を覗き込む。 「えー? それは嘘やろー?」  からかうように、笑い混じりの声でそう返す。  翔太は、きっと冗談を言っているのだと思う。  だって……翔太は……。  中学の時に女の子と付き合ってるって噂もあったし……。 「あの頃は、その気持ちが何なのか、まだよく分かってなかったかもしれんけど……」  だけど、顔を真っ赤にして話す翔太の声は、すごく真面目で、ふざけたりなんかしていない。 「これが、ただの幼馴染に向ける想いじゃないんじゃないかって思い始めたのは、中学になって、翼が……何故か俺との距離を取ろうとしてるみたいに、なんか避けるようになった頃や……」  真っ直ぐに見つめてくる翔太の瞳に、さっきまでの眠気が嘘のように吹っ飛んだ。  ──翼が、翔太と距離を置くようになった頃……。  それは、翼も翔太への想いが、ただの〝好き〟ではないと感じ始めた頃だった。だから、野球部にも入らずに遠くから応援することに決めた。  一緒に居るのが苦しくて……。  翔太との関係が、これ以上近づくこともなく、離れることもなく、一定の距離を保つのが一番良いと、その時は思っていたから。  翔太が、男である自分を好きになってくれるなんて思っていなかったから。 「だって……翔太は、中学ん時、彼女いたやろ?」  そう問えば、翔太は少し考えて、「……ああ……それは、そうやけど……」と答えた。

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