181 / 198
Growing up(37)
「……やっぱり……そうやったんや……」
噂が流れる前から、翔太はその女子と気が合うみたいで、仲が良かった。だからそれは自然な事だと思ってたし、昔の話だし、翔太の口から事実を聞かされても、別に平気だと思っていたのに……。
おかしいな──胸の奥に痛みが走る。
思ってた以上に、ショックを受けている自分に気が付いて、翼は苦い笑いを浮かべた。
「だけど……あいつには悪い事したって、今でも後悔してる」
「……なんで?」
「あの頃、翼への気持ちが本当なのか、まだ自信がなくて、めちゃ焦ってて……そしたら、翼は上級生の女子と付き合い始めて……」
──だから、自分も彼女ができれば……と思ったんやけど……と、翔太は言葉を続けた。
翼も、中学の頃、一度だけ一年先輩の女子に告白されて、付き合っていた時期がある。
翔太のことが頭の中の大半を占めていて、でもその一方で、どんなに好きでも、ずっと一緒にはいられないと思っていたから。
だけど、やはり上手くいかなくて、2、3回デートをしただけで、すぐに別れてしまった。
翔太とのハッピーエンドはありえないけれど、翔太じゃなければ駄目なのだと、あの時はっきり自覚した。
「でも……やっぱり駄目やった。彼女と一緒にいても翼のことばかり考えてしまうし……結局、続かなかった」
そう言って、翔太は翼を抱き寄せた。
「あの時、翼にちゃんと告白してたら良かったな」
「……ホンマや。言 うてくれたら良かったのに」
だけど、それは翼も同じ。
「オレも、もっと早く、翔太に気持ちを伝えれば良かった」
いつも、どうしたらいいのか分からなかった。
お互いに相手を想う気持ちに溢れていたのに、男同士だからという理由で、それを気づかれないように接してきたのだ。
「こんな風に抱きしめたいとか、翼にしか思わへんかった」
「……オレも」
そう返して見上げると、翔太は唇に軽く触れるだけのキスをした。
「キスしたいと思ったのも、翼だけやった」
「オレも、同じや……」
きっと、幼い頃からずっと、二人の気持ちは同じだった。それに気づかずに別々のところで、同じようにその想いを育んでいた。
もしかしたら、あの頃ではなくて、今だからこそ、その想いが通じ合えたのかもしれない。
ともだちにシェアしよう!