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それから~epilogue(4)
『今、大学で水野に会った』
短い文章を入力して送信する。当然だけど、返事はすぐには返ってこない。
──翔太は今、どこにいて、何してるんだろう。
すぐに返信がないなら、授業中かもしれないし、移動中かもしれない。
大学に行ってるかもしれないけれど、そうじゃないかもしれない。翼は、翔太の時間割までは把握していない。
分かっているけど、こんな時どうしようもない想いがこみ上げてくる。
全然寂しくないって言えば嘘になる。本当は……、
──寂しくてしかたない。
「寂しい」と声に出したら泣きそうになるから、もう絶対に言わないと心に決めている。
一度だけ、どうしても我慢出来ずにその言葉を口にしてしまい、翔太の前で涙が止まらなくなってしまったからだ。
あの夜、初めて翔太と身体を繋げて、なんだかフワフワと幸せで、翌日の夜はもうしないと言いながらも、でも傍に居れば、お互いに触れたくて止まらなくて。
今まで、あれだけ距離を置いて、会えない日が多くてもそれが普通だと思っていたのに。ずっとずっと昔から、遠くから見ているだけでいいとか思っていたのに。
それなのに……。
少しの間でも離れるのが嫌だなんて、どんどん贅沢な欲求が膨らんでいってしまった。
翌日、翔太の両親が帰ってくる前に家を出て、約束通りバッテイングセンターに行ったけれど、やっぱり身体が重くて翼はあまり打てなかった。
翔太と身体を繋げたのは、結局あの二晩だけ。
それでも残された時間、少しでも一緒に居たくて、毎日逢った。映画を観たり、街をブラブラしたり、久しぶりに水族館なんかにも行ってみた。
水族館のそばの浜辺に降りて、二人して靴を脱ぎ、どこまでも続く波打ち際を歩いた。
三月の海は、まだ冷たくて人影もまばら。陽が沈む頃、どちらからともなく手を繋いでいた。
二人きりになりたいけれど、そういうホテルに行くには、お互いに懐に余裕が無い。
『オレ、バイトして金貯める』
翼の言葉に、翔太はブッと吹き出した。
『ホテル代、稼いでくれるん? 試合観にくる為じゃなくて?』
『だってさぁ~二人きりになりたいし』
間髪入れずに、翔太が『スケベ』と返してきた。
『オレがスケベやったら翔太は、どスケベやろ?』
膨れっ面でそう言うと、翔太が頬にチュッと音を立ててキスをする。
『ちょ……』
慌てて周りを気にする翼の肩を、翔太の腕が抱きよせた。
『誰も居 らへんよ』
暮れかかる空に、白い三日月が浮かんでいる。
翔太は、ゆっくりと顔を近づけて、『今、二人きりやで』と囁きながら唇を重ねた。
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