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「いとしけりゃこそ、しととうて」なかじまこはな
「なんじゃこりゃあ!!」
リュカは置き手紙を見て声を上げる。
壁に貼られた紙には『 反省してください』の文字とアオバの名前。
「えっ?反省ってなに?」
壁の貼られている紙を剥して見つめる。
紙に書かれている名前、アオバはリュカの番。
「アオバ!マッティア!」
名前を叫びながら部屋中を探す。
マッティアは二人の子供。
叫ぶが返事はない。
名前を叫びながら探すがどこにも彼等はいない。
家を出て外を探す。
仲間達にアオバを見なかったか?と聞いて回る。
すると、「夫婦喧嘩かよ?」「なになに?もう愛想つかされた?」と仲間達によってたかってからかわれる。
くそう!!
「違うよ」
直ぐに否定。
「置き手紙して子供連れて出て行ったんだろ?お前が何かしたに違いない」
仲間の1人に言われた。
何かした?
何をしたかと考えてみるが思い当たらない。
「ここの暮らしが嫌になったんじゃないか?あの子まだ若いだろ?子供いるけど、あの子自体が子供みたいなものだから辛かったんじゃない?」
うっ……。
リュカは考え込んでしまった。
リュカはケンタウロス。アオバは人間。
アルファとオメガの運命の番。離したくなくてここに連れてきた。
もしかして……それが本当は嫌だった?
リュカは一気に青ざめた。
「む、迎えにいく……」
フラフラと歩き出す。
紙に書かれた反省してください。
この言葉には色んな意味が込められているのかも知れない。
自分の思いばかりを押し付けた?
無理やり連れてきた?
色々考えると自分勝手かもと反省してしまう。
ああ、そうか……こういう意味の反省して下さいなのか。
とぼとぼと歩いていると「パパあ」と声がした。
顔を上げると進行方向先にマッティアを抱いたアオバの姿が。
もしかして、もう会えないのかも……とほんの一瞬考えてしまっていたので泣きそうになる。
慌てて駆け寄る。
「アオバ!!」
駆け寄ると彼を子供ごと抱き上げた。
「なに?何で泣いてるの?」
驚いたようなアオバ。
リュカの瞳には涙が滲んでいる。
「反省した……」
アオバにそう告げる。
「本当?」
アオバは嬉しそうに笑う。
「うん……考えたよ。色々と自分の事しか考えていなくてアオバには……」
「ふふ、分かればいいよ」
アオバはリュカの頬にキスをする。
「今度からは人参残さないで食べてよね!」
「は?」
キスした後に放った言葉にリュカは固まる。
「いつもいつも、人参だけ出すでしょ?最近、マッティアが真似するんだよね……あと、読んだ本とかそこら中に置くし……それもやめてよね」
「えっ?えっ?」
自分が思った事とは違う言葉に狼狽える。
「反省したんでしょ?」
真っ直ぐに見つめられて頷くしかない。
「じゃあ、今夜はポトフだから人参残さないでね」
ふふと笑うアオバ。
反省してくださいって好き嫌い?
リュカはホッとした。
ここの暮らしが嫌になったんじゃなかったのか!!と安心した。
「分かった食べる」
「うん、いい子」
ニコッと微笑まれて出ていかれるくらいならニンジンくらい……と思った。
思ったけど、実際目の前に出されると「ううっ……」と震えるハメになった。
【感想はコチラまで→】なかじまこはな@nakajima00587
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