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【新しい世界】運営
春うららかな午後、学校が始業式を迎えて新しいクラスメイトに期待などもせずに、鼻歌を歌いながら帰路に着いた。
道すがら、おばぁさんが主そうな風呂敷堤なんて持ってるから、ついつい手助けをしたら家の方向とはかけ離れたバス停まで運んでしまった。
「ありがとうね」
おばぁさんのその一言が僕には嬉しいんだ。
「気をつけてね」
そう伝えて、今来た道を戻る。
さっきまで晴れていたはずの空が、だんだん曇ってくるから、不安になって足を早めた時だった。
「うぁ!?」
まるで、マンホールの中に落ちてる感覚?フリーホールで落とされてる感覚?
慌てて壁を掴もうと、手を伸ばしても何にも触れず恐怖心が煽られる。
中はただ、ただ真っ暗で何が起こったのかさえわからなかった。
「なんなんだよ!」
落ちている感覚はあるのに、身体はどこにもぶつからずに、俺は異世界の扉を開けてしまった。
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「あっば」
その声にハッと目を開けば部屋の中。
見慣れた部屋ではあるが現代ではない...丸い内側と、尖った先端...
俺の時代で言えばテントよりも円錐形と言えば伝わるかな?とんがり帽子なんだよね。
あの日、こっちの世界に来た時はどうなるかと思った。
「碧馬 ?」
その声に、気持ちが高潮するのは俺の体質のせいか、はたまた...この世界の理かはわからない。
「リュカ...おはよ、起こした?」
ぼんやりと、天井見上げてるケンタウロス...馬の下半身を持つ人であるリュカ。
寝る時は足を器用に畳んで眠るのだ。
「いや、マッティアが」
と、返事を返しながら見れば気持ち良さそうにリュカと同じよに足を畳んで眠る小さなケンタウロス。
こちらの世界に飛ばされまず驚いたのがこの下半身...あの時は実は少しチビった。
ここの世界はオメガ、アルファ、ベータの種類があるらしく俺が生きていた場所にはなかった事でまだ、よく分かっていないが、俺がオメガと言う子供を孕む体質になってこの世界に飛ばされたらしい。
そして、オメガとアルファには、特別な繋がりがありそれを「運命の番 」と呼ぶらしい。
それもこの世界に来て、リュカが俺を見た瞬間に綺麗な髪がふわりと浮いたんだ...
毛が逆立つって事らしいんだけど俺も、なんか電気みたいの走ってこの人の近くに居たいって、自然に抱きついてしまってた。
「碧馬、大丈夫か?」
まだ、ボケっとしていた俺の髪を撫でて耳にキスをくれる。
「くすくす、リュカ、くすぐったい」
リュカの肩に浮かんだ馬の印は、発情をすると真紅になり、普段は青が混ざったような紫に近い色をしている。
「碧馬の匂いはいつも誘うんだよ」
鼻を鳴らしながら耳の裏に突っ込んでくるからグイグイと押し返した。
「ちょ、マッティアが起きるっ...」
残念、と深いキスひとつで、済ませてくれた。
本当にこの世界に落ちた時は、驚いたけれど、今はとで幸せに3人で生きている。
残してきた家族が寂しがってないといいな...
なんて思いながらも俺はこの世界で生きていた。
マッティアを産んだ時は周りのケンタウロスも祝福してくれたし猫族、ネズミ族とか言うのもいて俺の生きていた時代と微妙に似ているのは生き物が、人との融合みたいな格好で祝福に現れた事だったな。
それまでは、リュカの守る陣営の中で生活していたから知らなかっただけで本当はもっと沢山の種族があるらしい。
「碧馬おはよう」
外に洗顔に出るとみんながそれぞれに挨拶を交わし穏やかな日常を過ごしているが、実は獣の中でも虎、ライオンなども居るらしく友好だけでは居られないので交代でこのテントの群れを守るのだ。
「おーい、碧馬」
門番をやっていた、俺と性格の似ているトモラという名のケンタウロスが戻って来た。
「トモラ、お疲れ様」
「ふふっ、族長が怒りますよ」
その言葉に家の方を振り返れば既に眉間にシワを刻んだリュカが腕を組んで立っていた。
ありゃ、怒りそうだな...そう判断してトモラに手を振った。
「またね!」
「おーう」
返事を貰った所で、俺はリュカに抱き着く。
「焼きもちは?」
「...妬いてない」
不貞腐れてるのが丸わかりなのに、有能なアルファは今日も無能なオメガに振り回されているんです。
【〜完〜】
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