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いざ、旧校舎の美術室へ③

「そ、想太っ……想太が……鏡の中にっ……!?」 「おい、落ち着け……優太……そんな事したら……お前まで―――」 泣きわめく僕を、ぶっきらぼうながら宥めてくれる誠。しかし、そんな誠とは違って知花は取り乱す事もなく―――そのまま、スタスタと鏡の前へと歩いて行き、先程の想太と同じようにピタリと左手を鏡に触れる。 「…………」 そして、知花は普段のように張り付けたように穏やかな笑みを浮かべながらチラリと慌てている僕と困惑しているような表情を浮かべている誠の顔を見つめると―――無言のまま、鏡の中へと吸い込まれてしまうのだった。 ◇◇◇◇ 「ど、どうしよう…………想太だけじゃなくて、知花まで鏡の中にっ……早く、新校舎に戻って……助けを呼びにっ……!?」 「あっ……おい、待て……優太!!」 何故、誠が美術室の扉へと急いで向かおうと僕を制止しようとしているのか分からなかったが、ソレを見た途端に――僕は誠が制止してくれた理由が分かった。 先程まで確かに存在していた筈の美術室の扉が―――忽然と消え去っており、代わりに通せんぼするかのように床や机に散乱していた使い古されたキャンパスや美術道具がその場に浮いているのだ。 ―――バチッ……ビリッ!! 「い……痛っ……!!」 試しに震える手で、ソレらを退かそうとしてみるものの―――触れた途端に静電気よりも強い電流が走り、思わず顔をしかめながら手を引っ込めてしまった。 「……優太、おそらくそんな事をしても無駄だ。きっと、俺らは……これを退かした所で新校舎には……戻れない」 「で、でも……じゃあ、どうすればっ……!?」 「いいか、優太……俺の手を絶対に離すな―――たとえ、何があってもだ……分かったか?」 「う、うん……分かった…………」 いつもは割と無気力な誠が珍しく神妙な顔をして僕へと言ってきたため、少し驚きながらもコクリと頷いた。すると、そのまま誠は僕の片手を強く握りしめ―――そして、例の鏡の前へ戻って行く。 ピタリ、と誠が左手を触れると―――そのまま鏡が光り――そして、それを最後に僕は意識を手放してしまうのだった。

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