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ようこそ、異世界へ①

◇◇◇◇ 次に目を覚ました時―――真っ先に飛び込んできたのは、雲ひとつない透き通った青空だった。そして、同時に僕の鼻を潮の独特な香りが刺激してくるのが分かった。 しかし、ふっと―――ある違和感を抱いてしまう。 僕らが通っていた学校があるのは都会の真っ只中で周りには、そもそも海など存在しない筈はのに―――何故、潮の香りが漂ってくるのだろうか。 それに、まだ不思議な事はある。 そもそも―――僕らは放課後で薄暗くなった旧校舎の美術室に行き、そこでプッツリと記憶が途絶えている訳で―――少なくとも部屋の中にいた筈だ。僕ら以外の人物など存在しなかった筈だし、あの状況で誰かが僕らを外に移動させてくれたとは―――到底考えられない。 それなのに、いつの間に―――外に移動したのだろうか? とにかく、今の現状を把握するためにもグッタリと横たわっている体を起こすしかない―――と、行動に移そうとした時に周りには誰もいなく、僕一人しかいないという事に気付いて血の気が引いてしまう。 ―――双子の兄である想太も、 ―――初恋の人である誠も、 ―――完璧な転校生である知花も、 目線だけで辺りをキョロキョロと見回してみても、姿さえ見当たらないのだ。 ―――その時だった。 コツンッと僕の側に小さな石ころが音を立てて地面に落ち、飛んできた方向を確認しようとそちらへ顔を向けた僕の目に、今までは姿さえなかった筈の知花のニコニコとした穏やかな笑顔が飛び込んできたのは―――。

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