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ようこそ、異世界へ④
「……まあ、シンの事なんてどうでもいいよ――優太くん、答えは決まったかい?それによって、これからの君と―――このワンちゃん達の運命が決まるんだから……慎重に答えを決めた方が……いいかもね?」
「……僕は…………僕は……っ……」
僕が知花の問いかけに対する返答に口をつぐんでしまっていると、ふいにグッタリと横たわり赤い鎖で体を拘束されたまま苦しそうに顔を歪めている誠が―――ジッと困惑している僕の方を見つめてくる。
「優太……そいつの……言う事なんて……聞くんじゃないっ……俺と想太は……そんな事を望ん出なんか……いな……い……」
―――ドカッ!!
知花がニコニコと穏やかな笑みを浮かべたまま、抵抗すら出来ない誠の体を蹴り上げる。その時、僕は心底から今の知花は恐ろしい存在だと感じたのだ。
「―――誠、オマエの意見なんて……オレは聞いてなんかないんだよ?オレは優太くんに聞いているんだから―――邪魔者は黙っててくれない?」
「……ま、誠の言うとおりだ…………僕は君の言う事なんて……聞かない!!」
僕の言葉を聞いた知花は、ふっと笑顔をといたかと思うと―――少しだけ驚いた表情を浮かべつつ僕の目をジッと見つめてきた。しかし、笑顔をといたのは一瞬だけで―――すぐにまた作り物のように完璧な笑顔を浮かべてくるのだ。
「―――それが優太くんの出した答え……なんだね?まあ、オレとしては別にどっちでもいいんだけど―――でも、きっと君は後悔するよ?後で、ああ……オレに協力しておけば良かったって思う筈だよ―――」
『……第一王子様―――何のお話をなさっているかサッパリ分かりませんが―――残念ながら時間切れです』
ふと、今まで怪訝そうな表情を浮かべながら僕と知花のやり取りを見守っていたシンという生き物が唐突に小さいドラゴンの姿から今度は黒髪の青年の姿へと変化すると―――恭しく頭を下げてお辞儀をしてから、遠慮がちに知花へと言う。
「ん~……残念、時間切れかぁ……それじゃあ……またね……優太くん、それに可愛いワンちゃん達!!」
―――パチンッ!!
と―――、知花が僕らへと愉快げに微笑みながら指を鳴らすと想太と誠に繋がれていた赤い鎖のような物は跡形もなく消え去ったのだが――その直後、彼らが横たわっていた地面の土がグニャリグニャリと意思を持ったかのように盛り上がり二人の体をあっという間に飲み込んでしまったのだ。
「そ、想太…………誠……!!?」
慌てて彼らを助けようと足を踏み出したのも束の間―――今度は僕の真下の土がグニャリグニャリと盛り上がっていくのを感じたが――時既に遅しで―――抵抗する暇もなく、僕の体までもが意思を持ったかのような土に飲み込まれていき―――再び、意識を手放してしまうのだった。
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