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ゴブリンとオークの村③

そういえば、僕が誠に対してクラスメイトや友達以上の恋愛感情込みの好意を抱いたのも―――この青木星夜という男の言動がキッカケだった。 『だっせえな……跳び箱すら満足に跳べねえのかよ……ノロマ野郎!!』 その当時―――、僕は体育の授業の跳び箱がどうしても跳べずに悩み続けていた。どんなに練習しても跳べずに、授業の度に青木とその取り巻き達にからかわれていたある日の事だった。 『……おい、お前ら……いい加減にしろ……」 いつも、そういった事には無関心で滅多に他人に話しかけない誠が―――悔しさから思わず涙ぐみかけてしまっていた僕をチラリと一瞥してから青木達の側へと近づいていき、彼らを冷たい瞳で睨み付けると、ぶっきらぼうな口調でそう言い放ったのだ。 『……っ…………』 流石に誠から冷たく睨み付けられた青木達は――悔しそうに誠を無言で睨み返すと、そのままサッサと何処かへと行ってしまったのだ。 『―――優太、お前なら必ず跳べる……俺を信じろ……』 授業が終わるチャイムが鳴り終わり、教室へと戻ろうとした誠に勇気を出してお礼を言おうと彼に近づいた時―――、すれ違い様に誠がボソッと呟いたのだ。 ――――あの時から、ずっと僕は誠が大好きなのだ。 ―――彼の為なら、命すら差し出してもいい程に。 ◇◇◇◇ 「―――おい、ノロマ!!何をボケーッとしてんだよ……俺の話を聞いてんのか?」 「えっ……と……ごめん、何て言ったっけ?」 その青木の怒った声に、かつての回想の世界に誘われていた僕はハッと我にかえった。そして未だに青木を苦手だと思っているせいもあり、遠慮がちに彼の顔をチラッと見つめてから尋ねる。 「ったく、ふざけんなよ……いくらアイツの頼みとはいえ……何で俺がこんなことしなくちゃいけねえんだよ―――いいか、二度と言わねえから耳の穴をかっぽじってよく聞けよ……ノロマのお前を呼んでる奴らがいるんだよ……アソコだ……黙って俺らに付いてこいって言ったんだよ!!」 ブツブツと文句を言いながら―――青木は面倒臭そうな表情を浮かべつつ、ふいっと目線を別の方向へと向けると―――とある場所を指差しながら怯える僕へと言い放つのだった。

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