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再会③

「な、何で……坂本先生が―――ここに!?それに……その……あそこにいて作業をしている彼らは一体……何者なんですか?」 「話しは単純だ……お前ら、旧校舎の鏡の噂は知っているだろ?おそらく、お前らも……それを試したから此処に来たんだろうが、俺が黒板に書いたメッセージを見なかったのか?まあ、あれを見た所で事態が好転するとは到底思えなかったが―――俺はそこにいて、ふてくされてる青木と共に鏡の噂の真相を確かめようとしてたんだ……そしたら、気付いた時には此処にいた……」 ―――そういえば、このミラージュとやらに来る前に旧校舎の美術室の黒板にチョークで文字が所々潰れていたメッセージが書かれていたのをハッと思い出す。 (あれは……坂本先生が書いた噂を安易に確かめようとするなっていう……忠告だったのか……まったく気づけなかった……) 今更、後悔の念が押し寄せてくるものの―――こうなってしまったからには後には引けないと思い直す。 「―――此処はゴブリンとオークの奴らが共同で暮らしている集落地だ。というより、俺がそのように作り直したんだ。最初は意志疎通すら困難だったが、今ではあんな事だってやってくれる……奴らは醜悪で暴力的な存在なんかじゃない……心優しくて賢い尊敬すべき種族さ――。」 「この世界でも、王族や一部のエルフ達から酷い仕打ちを受けているが―――俺はそんな彼らを救いたい……そう思って彼らと協力してこの集落地を作りあげた……まあ、まだまだ不完全な集落地だけどな!!」 そんな風に話している坂本先生は、ダイイチキュウにいる頃とは―――まるで別人のようにイキイキとしていた。どちらかといえば、黙々と真面目に職務をこなしていた坂本先生が―――子供のように無邪気でイキイキと笑う姿を僕はこのミラージュという世界にきて初めて見るのだった。 ◇◇◇◇ その後、《ゴブリン》と《オーク》それに青木と坂本先生達が協力して作ってくれたという料理を食べた僕らは疲れが溜まっている事もあり、早めに床につく事にした。 「ねえ、優太……知花が何処にいるか……知らない?」 「えっ……し、知らないよ……あれから知花とは会ってさえ……」 僕が窓から夜空に浮かぶ2つの橙色に光り輝く月をジイッと見つめていると、唐突に―――僕らをこのミラージュという世界へと飛ばした張本人である知花の行方について、真剣な表情を浮かべる想太から聞かれると、心臓が飛び出てしまう程に驚いてしまった。 ―――しかし、僕は昔から嘘をつくのは得意ではないため、すぐに怪訝そうな表情を浮かべながら想太がジッと僕の目を見つめてきた。 「―――嘘、優太は知花が何処にいるか知っているんでしょう……それとも、彼と何かあったの?」 「そ、それは……その……っ……」 知花から、とある人物に対して復讐するのを手伝って欲しいと言われた事など―――まさか、彼に対して好意を抱いている想太になんて簡単に言える訳もなく言葉に詰まってしまう。 「落ち着け……想太―――優太は何も知らないし、知花とも何かがあった訳じゃ……ないぞ……」 「ま、誠………っ……」 その時―――、誠がまたしても僕を庇うように助け船を出してくれた事に心の底から嬉しくなってしまう。 「―――嘘、嘘……じゃあ、この首筋についてるキスマークは……何!?優太に、こんな事するのなんか……知花しかいないっ……優太の事しか気にかけてなかった……知花しかっ……僕の事なんて気にかけてくれなかった……知花しかっ……いないじゃないか……優太なんて―――知花から特別扱いされる優太なんて大嫌い!!」 いつもは冷静な想太が、このように取り乱すのは珍しい。それほどに―――想太の知花に対する想いは強いのだろうか。 「ち、違うっ…………僕は……僕が好きなのは知花じゃなくて……ま…っ……」 と、想太に言いかけた所で―――慌てて口をつぐんでしまう。何故なら、すぐ側に急に喧嘩を始めた事に対して困ったように眉を潜める僕の想い人――誠の姿があるからだ。 「もう、いい……っ……優太の嘘なんて―――もう、聞きたくなんてない!!」 「ま、待って……待ってよ……想太っ……!!」 ―――バタンッ!! 涙を浮かべながら出て行ってしまう想太を追いかけるべく、衝動的に扉へと向かい、闇夜が支配する外へ出て行く僕なのだった。

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