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すれ違う心①

◇◇◇◇ ―――リィン……リィィンッ…… 夜の森の中に―――虫の鳴き声が響き渡る。その鳴き声を響き渡らせているのは鈴のように膨れた金色の腹を持った虫達の大群で、想太は優太と喧嘩別れしてから―――ジイッと熱心にそんな虫達の姿を見つめていた。 それはスズハライライ虫と呼ばれていると坂本先生から教えてもらった事をフッと思いだした想太だったが、気を抜いてしまうと―――頭の中で先程、困惑している表情を浮かべてオロオロしていた優太の姿が思い浮かんでは消えるのを繰り返してしまうのだ。 (―――あんな事、あんな八つ当たりみたいな言葉……優太に言うつもりなんて……なかったのに……早く謝らなきゃいけないのに……ボクがあんな態度を取ったのは単なる嫉妬だったって……言わなきゃいけないのに……どうしても勇気が出せないよ) ポタッ―――― 想太が両膝を抱えながら、涙を流す。 すると、そのせいでスズハライライ虫の膨れている腹の上に涙が落ちる。その途端に―――スズハライライ虫の大群は素早い動きで何処かへと移動してしまったのだ。 「おい―――お前、こんな所で何してんだよ!?あのノロマ野郎達と寝たんじゃなかったのかよ?」 「あ、青木……青木こそ……こんな場所で何してっ……」 ―――ふいに、頭上から声をかけられた想太はビクッと体を震わせてから驚きつつも頭をあげた。そこには、《ゴブリンの子供》と一緒にいる青木が怪訝そうな表情を浮かべながら、いつの間にか立っていたのだ。 ◇◇◇◇ 「―――お前ら、馬鹿じゃねえの!?再会したばっかなのに……もう喧嘩したのかよ!?つーか、これ以上……俺らを面倒事に巻き込むんじゃねえよ……仕方ねえな、俺があのノロマ野郎の優太を呼んできてやる―――此処で待ってろ、そしたら……仲直りしやがれよ?」 「ち、ちょっと……待ってよ――――青木ったら!!」 慌てて止めようとする想太の言葉を聞こえなあ振りをした青木は《ゴブリンの子供》と共に優太がいる藁の家へと戻っていくのだった。

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