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素直な気持ちを告げよう①
その時―――、唐突に誠のぶっきらぼうな笑顔が浮かんできた。そして、僕の頭の中でとはいえ―――誠に自分の素直な気持ちを目の前にいて僕を押し付けている青木へと告げろ、と言われたような―――気がしたのだ。
「―――い、嫌だ……っ……僕は……僕は青木なんて好き……じゃない!!僕に意地悪を言う青木なんて……好きじゃない。僕の事をノロマとかいって馬鹿にする青木なんて―――好きじゃない。それに、それに―――僕は……僕には青木じゃない他の人が……世界で一番大好きなんだ」
その時初めて―――僕は青木へと今まで溜まっていた悲しい気持ちや青木に対して抱いている素直な気持ちを告白したのだ。
すると、僕の体を押さえつけていた青木は――意外とあっけなく、僕の体の上から離れて―――顔を苦しそうに歪ませつつ、涙ぐみながら話す僕へと勢いよく何かを投げてきた。
―――それは、少し小さめのボロ布だった。
おそらく、これで涙を拭けという彼なりの優しさなのだろう―――。
「―――馬鹿、お前が木下を好きなのなんて百も承知なんだよ……ただ、お前が俺の言葉に対して、そんなに傷付いてるなんて――思ってなかった。もう、お前の事を……その……押し倒そうなんて血迷った事はしねえし、馬鹿にしたりもしねえ―――だから、想太と仲直りしてこいよ。その名前のとおり、優しく想い合ってこその―――テメエらだろうが!!」
ボロ布で涙をぬぐう僕の方から目を逸らしつつも、どことなく優しい口調で話しかけてきた青木の言葉を聞くとコクリと頷いてから、ペコッと青木に頭を下げると―――その場を後にするのだった。
「あ~あ……フラれちまった―――」
急いで森の方へと走っていく僕の後ろ姿を見つめつつ、青木がそんな言葉をボソッと呟いた事など―――想太と仲直りするために夢中で駆けている僕には知る由もなかった。
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