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襲撃②

―――いつの間に、その男はこの部屋へ入って来たのか……と疑問に思うくらいに、気配すら微塵も感じなかった。 よくよく見て見れば、その男は―――ダイイチキュウに存在している人間とは明らかに違う容姿を鋳ているのが分かる。 とはいえ、この藁の家や辺り一帯の集落地で暮らしている《ゴブリン達》や《オーク達》とも明らかに違う容姿をしている。 ―――《ゴブリン》のものよりも長く尖った美しい耳。瞳の色は血のように赤く、肌の色は―――まるで雪のように白い。髪の色は―――白銀色だ。 ―――《ゴブリン》や《オーク》とは違って、目鼻立ちの通った美しい顔つき。 ―――耳が長く尖っている事を除けば、姿形はパッと見は人間に割とよく似ている。 その謎の男は―――かつて、ダイイチキュウにいた頃に想太がよく読んでいた本に出てくる《エルフ》という種族に瓜二つだったのだ。 「あ、貴方は……誰…………というか、何で―――此処に!?」 「あ~……面倒くせえ……って事で―――とりあえずは、さようならだ……マコト!!安心しろ……命までは奪わねえからよっ……」 僕の問いかけはサラッと無視して、その《エルフ》に瓜二つな男は、おもむろに懐から短剣を取り出すと、何の躊躇もなく――剣の切っ先を呆然としている誠の方へと向けながら勢いよく突進しようとしてくる事に僕は気付いたのだった。

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