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襲撃③

「だ、駄目…………っ!!」 《エルフ》という種族に瓜二つな容姿の男から攻撃されようとしているにも関わらず、何故かピクリとも動こうとしない誠の前へと―――躊躇する事なく自然と足を踏み出していた僕は彼を必死で庇おうと両手を出来る限り広げながら前へと飛び込んだ。 「ゆ、優太……っ……おい、大丈夫か……優太!?」 「ちっ……しくじった……余計な事すんなよな……マコトの恋人くん……んな事したら、俺様がアイツに叱られんだろうが―――」 忌々しそうに文句を言い放った謎の男は―――腕が血にまみれている僕をジロッと冷たく見つめつつ、慌てて駆け寄ってきてくれた誠と腕を抑えて苦しげにうめき声をあげながら床に倒れている僕の側から、一旦は離れる。 ―――すると、 「あ~……ナギったら、シリカ様の命令に背いてマコトの恋人くんを傷つけてる~……いけないんだ……いけないんだ~……」 そう言いながら、またしても聞き覚えのない甲高い少年のような声が何処かから聞こえてきた。 目を丸くしながら辺りを見回すと、ふいに倒れている僕と呆然としている誠の目の前の空間に縦に伸びた亀裂が現れた。しかも、その縦に伸びた亀裂は謎の男のちょうど頭上辺りに現れたため―――何が起こったのかすぐには理解出来なかった。おそらく、それは誠もなのだろう。 「―――うっせえぞ、ミスト……てめえこそ、マコトの恋人に対する色仕掛け作戦とやらが失敗してんじゃねえか……あんなに自信満々だったのは……どこのどいつだ!?とりあえず、姿を現しやがれ―――面倒くせえ」 ――ピキ、 ――ビキッ……ビキ…… と、実際に音が鳴った訳ではないけれども――もしも音が鳴るならば、多分このような音が鳴るに違いないような動き方で空中に現れた亀裂に徐々に開いていき―――中から、僕らの見覚えのある人の姿がヌッと現れるのだった。

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