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地下牢で僕らは仲間になる④
「は、早く……早く想太を探しに行かなきゃ……!!」
「ち、ちょっと……落ち着きなよ、マコトの恋人くん―――チカ様がどこにいったか手掛かりもなしにそれは厳しいって……ねえ、サンも何とか言ってよ!!」
「―――すまない。こうなったのは……第二王子殿を甘く考えていた……我々の責任だ。その事については謝るが……ミストの言う通り、これから手掛かりもなしにどうやって行動する気だ?大体、まずは此処から出ないと―――話に……」
――コツ、コツ……
―――コツ、カツッ……
そんなやり取りを暗くてジメジメしている牢屋の中で僕らがしていた時、ふいに地下牢の入り口の方から足音が聞こえてきた。耳を澄ましてよく聞いて見ると、その足音の主は―――どうやら一人らしいのが分かる。
「おや……意外と冷静ですね。ならば、私が来る必要などなかったでしょうか―――まあ、いいです……今の状況を簡潔に説明致します。ミラージュの第一王子のチカ様が―――《ゴブリン》と《オーク》の群れを操り、反乱を起こしました。第二王子のシリカ様と……そこにいるユウタさんのご兄弟であるソウタサマを人質に取られ――何処かへ消え去ってしまったのはご存知ですよね?」
―――その足音の主であるシンが無表情のまま淡々と僕らに説明してくれた。今は、出会った時のようにミニドラゴンの姿ではなく人間の青年の姿なので、なんとなく安堵してしまった。
「あ、あの……シンさん―――知花がどこに行ったか知りませんか?それに繋がる手掛かりでも良いのですが―――」
「愚かですね、手掛かりなら……貴方の足元に落ちているではないですか……チカ様はその白い花が咲き誇る場所を……棲みかとしています―――そして、これから貴方達はここを出て西の方角にある《ティーナの酒場》に向かいなさい……きっとそこの看板娘がよくしてくれる事でしょう」
―――グッ……
――メキ……メキャッ!!
無表情のまま淡々とした口調で、シンが僕の足元に落ちていた想太がいつも使っていた《白い花がついた押し花の栞》を指差しながら答えてくれた。そして、彼がおもむろに檻の柵を両手で掴むと―――あれほどビクともしなかった檻の柵があっという間に壊れていくのだった。
◇◇◇◇
その後、グッタリと気を失ったまま横たわったままの青木と坂本先生をシンに任せて―――僕ら一行は白い花が咲き誇る場所の手掛かりを得るために―――王宮を出て、シンが教えてくれた《ティーナの酒場》とやらを目指す事にするのだった。
3人のエルフ達と共に――――。
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