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ティーナの酒場を目指して僕ら一行は歩く②
―――ドンッ!!
「ご、ごめん……っ……!!」
「いってぇな……こんな夜道でボーッとしてんじゃねえよ……ったく、ただでさえ暗くて見えねえってのに―――つーか、酒場とやらはまだ先なのかよ……んん、何だよ―――これ?」
森の中の何処かから聞こえてくる女性の歌声とは別に、辺りに潮の香りが漂ってくる。ひょっとしたら―――すぐ近くに海があるのかもしれない。そういえば、このミラージュに知花から半ば強引に誘われて舞い降りた時も―――辺りには吸い込まれてしまいそうな程に透き通った青い海が広がっていた、と思い出す。
しかし、その事よりも―――この何処かから聞こえてくる謎の歌声の方がどうしても気になってしまい、そのせいでボーッとしてしまっていた僕は思わず後ろからナギが着いてくるのを忘れてピタリと足を止め、その結果―――僕の体にぶつかってしまった彼から怒られてしまったのだ。
「ん~……どうしたの、ユウタ?何か気になる事でもあった―――それに、ナギも何をそんなに熱心に見つめてるの?」
ふと、僕とナギの前を歩くミストが僕らのやり取りに気付くと、わざわざ引き返してきた。そして、歌声を聞いているせいでボーッとしてしまっている僕と―――それとは別に何かをジッと見つめているナギへ怪訝そうに尋ねるのだった。
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