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ティーナの酒場②

「―――それでさ、聞いてくれよ……ウィリアムの奴が……また……」 「………娘が海に沈んで気が狂っちまった変人野郎がどうかしたのか?」 「そんなのいつもの事だろうが……それより、ギルドで魔物退治依頼が出てたな……いっちょやってやろうぜ―――俺ら達全員でな!!」 僕らがその建物の中に入ると、目の前に飛び込んできたのは甲冑を身に付け武器を背負っている冒険者らしき男達が酒の入ったグラスをかかげながら、賑やかに談笑している光景だった。 ―――相当、酒が入って酔っ払っているのだろう。 扉を開けて中に入ってきた僕らには――見向きもせずに、話に花を咲かせている。愉快そうに談笑している彼らの邪魔をしては悪いな、と思い遠慮しながら扉の前で立ち尽くしていると―――、 「あら…………この辺りでは見かけない顔ね。えっと……5名で良かったかしら?此方へどうぞ~!!」 ふいに、カウンターで酒を作ったり料理をしていたりと忙しそうに客をもてなす準備をしている女の子が元気な声で所在なさげに立ち尽くしている僕らへと声をかけてくれる。 「いよ~……さっすがは看板娘のティーナちゃん!!相変わらず可愛いね~……」 「ティーナちゃんは俺たちの癒しだもんな~……見てるだけで日頃の疲れがぶっ飛んじまう」 ピィ、ピィ~と口笛を吹いたり手をたたいて拍手しながら―――酔っ払ってできあがっている冒険者らしき男達が、僕らに元気よく話しかけてくれた女の子をからかうのだ。 「もう、そんな風に言ったってお金は安くなりませんからね!!」 冒険者らしき男達へ、にこやかに頬笑みつつ――彼らからティーナと呼ばれた女の子が言うとすぐに僕らの方へ目線を向けてきたため―――そのままティーナに言われた通りカウンターへと歩みを進める。 すると、そこに僕らとティーナ―――そして、酔っ払ってできあがっている冒険者らしき男達以外にも男が一人座っている事に気付いた。 その男は割りと年をとっており、無精髭を生やしているのが分かる。そして、カウンターへ歩いて行くときた僕らの方に目を向けてチラリと一瞥した後は、無言で黙々とグラスに入った酒らしき液体を飲む。なんだか、随分と疲弊している様子で―――どことなく、げっそりしているようにも見える。 「ねえ、貴方達――――お料理は何を食べる?あ、それよりも飲み物の方がいいかしら?貴方達、ずっとここまで歩き続けてきたのでしょう?喉が渇いていても、おかしくないわよね?」 と、僕が一人で座っている男に気をとられてボーッとしまっていると―――ティーナの可愛らしい声でハッと我にかえる。 ティーナは冒険者らしき男達が言うように確かに可愛らしい。二重の大きな水色の瞳、栗色の長い髪をふたつ三つ編みにしていて黄色のリボンで結んでいる。白いフリフリのレースが施された淡い紫色のエプロンドレスを身に付けているが、それもよく似合っている。 しかし、ティーナの何よりも魅力的なものは―――その天使のように美しい笑顔だ、と僕も冒険者らしき男達と同じように感じるのだった。

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