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ティーナの酒場③

ナギは明らかに―――ティーナさんの魅力的な笑顔に鼻の下を伸ばしてデレデレしている。 「え~っと……お料理だったら、あたしのオススメはこれよ……《チコリの実とクルックルー実のサラダ》……あとは、お肉だったらコモードラゴンの丸焼き!!これ、ウチで一番の人気なんだから……まあ、でも……とりあえずコレを飲んで喉を潤して?ああ、安心してね……お酒の濃度はそんなに高くしてないから―――」 と、ティーナさんは天使のように美しい笑みを浮かべつつ、メニューを僕らに見せながら店のオススメを話してくれた後、酔っ払った冒険者の男達が飲んでいるものと同じ薄い赤紫色をした液体の入っているグラス。僕やナギは興味深そうにメニューを見ていたのたが、ふいにサンとミストが神妙そうに店の中を見回した。 誠はいつも通り、無愛想な表情を浮かべつつも――急に酒場の中を見回し始めたサンとミストの様子が気になるのか、じっと彼らを見つめるのだった。 ―――ギリリッ ふと、神妙な顔をしていたサンがメニューを置くためにカウンターの方へと背を向けたティーナに気付かれないように一瞬の隙を狙って、己が背負っている弓を取り出すと―――何故か、そのまま単なる酒場の看板娘である彼女へ向かって弓を構えるのだった。 ―――サンはティーナを……攻撃しようとしているのだ。

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