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大切な人を助けに① ※誠視点
――ゴポッ……
――コポッ……ゴポ……
3人のエルフ達が魅惑の歌声を発していたクラーケンを攻撃し、忌まわしいそれを止めてくれたおかげで錯乱状態から正気に戻れた俺は――その後、ウィリアムという男を助けるために海に飛び込んだ優太の事を思い出して咄嗟に海へと飛び込んだ。
――もちろん、優太とウィリアムという男を救い出すためだ。
夜の海の中は暗い事の恐ろしいのだが、深く潜っていけばいく程に方向感覚を失ってしまい、自分がどこを泳いでいるのか分からなくなってしまうと前にテレビか何かで見ていたため――むしろ、クラーケンという現実離れした魔物よりも恐ろしいと感じてしまう。
(優太……優太――どこに、どこにいるんだ……あっ……あれはっ……)
俺が海の中へ潜り、優太とウィリアムという男を必死で探しているとクラーケンの下半身に何本も生えている蛸の足のようなヌメヌメとして不気味に蠢く触手に捕らえられた二人を見つけたため――急いでそちらへと泳いでいく。
俺がなんとか気持ちの悪い触手に捕らわれている優太とウィリアムという男の元へたどり着くと、ふと――優太の手に何かが握られている事に気付いた。
(これは――ナイフか?でも、何故……優太はこんなものを??まさか――このナイフでクラーケンの触手を攻撃してウィリアムという男を逃がそうとしたのか……)
(しかし、とてもじゃないが……この小型のナイフだけでは――クラーケンの触手に多少のダメージは与えられても……威力が足りなさすぎる……他に、何かないか――あっ……あれなら……きっと……)
と、そこまで俺が考えていると突然、息が苦しくなってきたため、一旦は水上へと上がり――それからクラーケンに気付かれないように慎重に息を深く吸い込むと、今度こそ優太達を救い出すために再び海の中へと潜り込むのだった。
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