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お前に目覚めのキスを② ※誠視点

ふと、無意識の内に優太の唇に自分の唇が重なっている事に気付いてハッと我にかえった俺は慌てて彼の柔らかい唇から自分の唇を離す。 そして、ふいに――優太の服が汗でビッショリと濡れてしまっている事に気付いた。もちろん、酒場に戻ってきた時に海水でグッショリと濡れてしまっていた服から替えの寝間着へと親切なティーナが着替えさせてくれたのだが――今度は全身から吹き出る優太自身の汗でグッショリと濡れてしまったのだ。 気を失ってしまっているとはいえ、このままでは流石に優太が可哀想だと思ったので、一旦――優太の側から離れると部屋から出ていき、まだ起きている可能性の高いティーナがいる一階へと降りていくのだった。 ※ ※ ※ 俺が一階へと降りていくと、ティーナとノルマンという初老の男が優太と同様に体が冷たくなりグッタリと気を失っているウィリアムを熱心に看病していた。 「あら……何か足りない物でもあったかしら?もし、そうだったら出来る限り用意するわ」 「えっと……着替えの服を何枚かと――汗を拭くためのぬるま湯とタオルを頼む――そっちも大変そうなのに……悪いな」 ふと、心配そうにウィリアムの顔を覗き込んでいたティーナが少し慌てた様子で俺の元に駆け寄ってきたため申し訳なく思いつつも頼み込む。 ティーナはすぐに仲間を看病するために必要な物を用意してくれて、それを少し遠慮がちに受け取った俺は再び優太が待つ二階の個室部屋へと戻って行くのだった。

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