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二人きりの夜②

「えっと、それでは此方の個室へどうぞ~ ……。貸し切りの個室ですけども~……脱衣場は他のお客様もいらっしゃいますので~……迷惑行為はご遠慮くださいませ~」 「あ、ちなみにですけども~……此方は時間制限付きの個室となっておりますので~……前のお客様が違反されて、まだいらっしゃいましたら申し訳ありませんけど~……交代の時間ですとお伝えくださいませ~……それでは、ごゆっくり~♪」 受付であるエルフのお姉さんが、やる気があるのか――ないのか、相変わらず間延びした声で僕と誠へ鍵を渡すと、最後にペコリと頭を下げてから【ΦΦπΩβΨΚβΩΩπЙ(だついばはこちらです)】と壁に貼られている案内掲示板を指差してきたため僕らはそちらへと歩いて行くのだった。 ――ガラッ……!! (確かに……順番制で貸し切りの個室風呂とはいえ……脱衣場には色んな種族がいるな――ニンゲン、エルフ……ゴブリン……流石にオークはいないか……あれは――スケルトンか……) 布すら纏わずに裸同然のスケルトンも風呂に入るのか――と、驚きながら脱衣場の中をキョロキョロと観察していると――周りいるニンゲン(おそらく冒険者)達から睨まれているような気がして慌てて目線を逸らす。 「……優太、あまり周りの奴らをジロジロと見るんじゃない――さっさと服を脱いで、個室風呂に入ろう」 「う、うん……ごめんなさい――誠……」 ふと、僕が周りの人達をキョロキョロと見渡していたら隣で黙々と服を脱いでいた誠が、どことなく低い声色で注意してきたため、ショックを受けて落ち込みながらも僕も服を脱いでいく。 「よし、じゃあ――入るぞ?」 「うん……誠――さっきは……ごめ……ん……っ……」 服を脱ぎ終えると、僕は足早で個室風呂へと向かっていく誠を慌てて追いかける。誠は、僕と違って歩くスピードが速いからだ。 誠が個室の扉を開け、僕が先程の脱衣場で失礼な行為をしてしまった事に対して再び謝ろうとした時――、 ――ドンッ……!!! 元々、ドンクサイ僕は中にいる先客が扉から出ようとしていた事に気付かずに真っ正面から金髪の男の人に思いっきりぶつかってしまい――床にしりもちをついてしまうのだった。

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