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別れの朝②

その後、僕達一行はティーナさんが腕によりをかけて作ってくれた朝ごはんを食べた。あまりの美味しさに身も心も満足した僕は――ずっと此処にいたいという気持ちが強くなってしまう程に――この酒場から離れる事に対して寂しさを抱いてしまうのだ。 クラーケンを倒し、アンデッドの皆も本来いるべき墓場へと戻った。そして、ティーナさんの好意に甘えて宿屋で泊まらせてもらったおかげで体調も充分に良くなった。 ティーナさん達と別れ、この酒場を離れ――目的を果たすために新たに道を進むべき時が来たのだ。 「あ、あの……今日、僕達は大切な人達を探しに行くために――この酒場から出て行って新たなる地へ行こうと思います。そこで、ティーナさん達に聞きたいんですけど……この白い花について心当たりは有りませんか?」 僕は想太が落とした白い花の押し花の栞を、ティーナさん達へと見せながら尋ねてみる。しかし、ティーナさん達は不思議そうに首を傾げるばかりで僕に何と答えればよいのか分からないのか困惑しきっているのが分かる。 「えーと、そうね……アタシ達は分からないけれど……ひょっとしたら――この酒場から暫く真っ直ぐに歩いて行った先にある村の誰かに聞いてみたら何か分かるかもしれないわ。ただ、その村は普通とは少し違うから気をつけてね。そうだわ、最後に――アンデッドの皆が眠る墓にお祈りしてから……お別れしましょう」 最後にティーナさんは、どことなく寂しそうな表情を浮かべつつも――僕達一行に優しく丁寧にアドバイスしてくれた。 その後、ティーナさん達と一緒に酒場の常連だったアンデッドの皆の墓前で祈りを捧げた僕達は、とても名残惜しかったが、ティーナさん達と別れ――新たなる目的地である村を目指して歩き始めるのだった。

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