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新たなる目的地の村へ①

※ ※ ※ ティーナさん達と別れ、ひたすら真っ直ぐに歩いていると、いつの間にか――すっかり日が暮れてしまっていて辺りは既に暗くなり始めていた。 酒場の周辺は見渡す限り――真っ青な海に囲まれて波の音が心地よかったが、僕達が今歩いている場所の周辺を囲んでいるのは真っ青な海ではなく毒々しい程に紫色の葉が生い茂って腐敗臭が鼻をつく不気味な森なのだ。 ミストの低級光魔法で辺りを照らしているとはいえ――僕らはぐにゅぐにゅとした感触が気持ち悪い地面に出来た腐敗毒の水溜まりに足をとられてしまわないように注意しながら、この不気味としかいいようのない【腐った森】をただひたすら真っ直ぐ歩き続けていく。 おそらく、この腐敗しきった不気味な森を抜ければ――ティーナさんが教えてくれた村へとたどり着くのだろう。 「……はあ、まだ村とやらに着かねえのかよ――ただでさえ、俺様達エルフはニンゲン共と違って体力がねえっつーのによ……」 「ナギ、ニンゲンの子供みたいな事は言わないの……全く、そんな所も――シリカ様にソックリなんだから~……」 「おい、お前達…………あんまり余計な事ばかり喋ると――尚更疲れるぞ……無駄話は止めろ」 見渡す限り、毒々しい紫色の木々や草に囲まれて、ナギとミスト――それにぶっきらぼうなサンの微笑ましいやり取りを聞きながら僕と誠も歩みを進めて行く。 ――すると、 「ピィー……フィ―……」 どこからか、なにかの生き物の悲鳴のような微かな声が聞こえてきたため僕と誠は――ほぼ同時にピタリと足を止めてしまう。 そして、誠と共に僕は悲鳴が聞こえてきた方へと駆け寄って行く。 「フィ―……ピィー……ピィー……フィ―……」 その悲鳴のような声をあげている生き物を見つけ出のに、少し時間がかかってしまった。 悲鳴のような声をあげている生き物は、僕の人差し指程の大きさでお世話にも大きいとはいえないようなサイズだからだ。それに加え、辺りは暗くなりかけていている事や更に肌の色も周りに生えている草に同化するような毒々しい紫色なのでパッと見ただけでは発見しにくかっあのだ。

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