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新たなる目的地の村へ②
「おい、ピクシーのヤツに気を取られてねえで――さっさと村に向かおうぜ。厄介なコイツに関わると録な事にならないからな」
「ナギに賛同するのは不本意だが――私もさっさと村に向かった方がいいと思うぞ……」
「……ったく――サンはいちいち、一言余計なんだっつーの!!」
僕と誠が毒々しい紫色の草の上に力無く横たわって切なそうな声をあげている生き物に慌てて駆け寄った途端、ナギとサンが――ピクシーと呼ばれた生き物をソッと拾いあげようとする僕を制止してきたのだ。
――ピクシー。
これも、前にいたダイイチキュウで想太がよく読んでいた絵本で見た事がある。確か、悪戯好きで愛くるしいフェアリーと呼ばれる妖精だったはずだ。
『ピクシーはね――小さくて悪戯好きで、とっても可愛い妖精なんだよ。悪戯好きっていっても大した悪戯はしなくて、例えば旅人の持つランタンの火を息で吹き消したりとか――旅人の頭に木の実を落としたりとかする程度のものなんだって……』
以前、このような事を想太が楽しげに話していた光景が頭の中にフッと浮かんできた。
「で、でも……この子――怪我してるみたいだよ?このまま何もしないなんて……可哀想たよ」
「俺も――優太の意見に賛成だ。流石に何もしないなんて……気分が悪くなる」
ナギとサンが何故か真剣な様子でピクシーを助けようとする僕を制止してきたため、僅かに緊張しつつ――言いにくそうに彼らへと僕は自分の意思を告げる。すると、幸いな事に誠も僕の意見に賛成してくれたのだ。
「あのな……お前ら――俺様が何でピクシーのヤツを助けようとしてるのを反対すんのか分かってねえだろ……俺様は――」
「……マコトの恋人くんとマコトの事を心配してるからだよね~……まったく、素直にそう言えばいいのに。ナギったら素直じゃないんだから……あ、あと――サンもだよ?」
「ミスト……てめえも、一言余計だ!!」
ナギが呆れたように僕と誠を一瞥してから、大きな溜め息をついてからバツが悪そうに言ってくる。
そんなナギの言葉をミストが途中で遮り、ニコニコと愉快げに笑いつつ二人をからかうように言ってきたため――ピクシーを拾おうとする手を思わず止めてしまう僕。
何故――そんなにもナギ達はこの小さく愛くるしい妖精を恐れているのだろうか、と心の中で考え込んでいると――まるで、僕の心の中を読んだかのように尚も神妙そうな顔をしているナギやサンと目が合ってしまうのだった。
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