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新たなる目的地の村へ③

「分かったよ……好きにしろ。俺様は――忠告はしたからな?もしも……そのピクシーを助けて、てめえが危害を加えられても――俺様に文句は言うんじゃねえぞ」 「……そいつを助けるなら早くしろ。じきに、辺りが暗くなってくる――」 ナギとサンは、どことなく不満げな表情を浮かべ――怪我をしているピクシーを助ける事に対して納得しきれていない様子だったが次第に僕と誠を説得するのを諦めつつあるのか素っ気なく言い放ってくる。 「――マコト、恋人くん……ミストはさ、このピクシーを助ける事に文句を言うつもりはないんだよ。でも、もし――ナギの言う通り……なつかれて危害を加えられるかもしれない。それでも、このピクシーを――助けたい?」 「それって……ピクシーになつかれて悪戯されるかもしれないって事?でも、ピクシーの悪戯は――可愛いらしいものなんじゃないの?僕は、そう聞いてだけど……」 ふと、ミストが真面目そうな顔つきで杖を持って構えながら僕と誠と怪我をして毒々しい紫色の草のベッドでグッタリと横たわって力無く悲痛そうな鳴き声をあげているピクシーの元へと歩み寄ってくる。 そして、いつもの陽気な態度とは違って低い声で僕へと問いかけてきたため、目を丸くして驚きつつ怪訝そうな表情を浮かべながらミストへと尋ねてみる。 「……ピクシーの悪戯が――可愛らしい?それ、完全に間違った知識だよ。ピクシーはね、その可愛らしい見た目を利用して己のテリトリーである森に旅人を誘い込むと幻覚を見せてから森をさ迷う旅人たちの壊れていく様を見て笑っていたり、ガリトラップって呼ばれる罠をしかけて――最悪の場合、ニンゲンの命を奪ってしまう。それでも可愛らしい悪戯っていえる?助けてあげる――って軽々しく言える?」 「そ、それは……っ……」 ミストは尚も真面目な表情を浮かべたまま、僕の目をじっと見据えて静かに淡々と問いかけてくる。そのミストの余りにも真剣な剣幕に、少しだけ怪我をしているピクシーを助けるのを躊躇してしまいそうになるが、誠が無言で僕の肩に優しくポン、と手を置いてからコクッと頷いたため――僕はギュウッと手を握って決意するのだった。

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