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~城内にて~
◆ ◆ ◆
優太達一行がワーグの群れから逃れて村人に助けられた村から少し離れた場所――。
そこには高くそびえ立つ白い古城があり、その城の周りを取り囲むように石畳が敷かれている城下町が存在している。
そして、そんな白い古城の窓から城下町を忌々しげに見下ろす影がひとつ――。
――コン……
――コン……コンッ……
「――入って」
その影は扉がノックされた事に気付くと、小さく舌打ちをしてから仕方なく見下ろしていた城下町の方から目線を逸らすと、部屋の外で待機したまま己の言葉を待つ従順なしもべに命じる。
「失礼します……カエーレズの森にてワーグの群れに襲われていた者達を連れて参りました」
「そんな事は分かってるんだけど!?さっさとそいつらを見せろ……」
明らかに不機嫌な様子で影は己のしもべへと、ふてぶてしく命じる。しもべは少しだけ眉を潜めたものの、つい今しがたまでワーグの群れに襲われていてグッタリとしているナギとサンを主人である影へと見せる。
「……何、これ!?エルフしかいないじゃないか……ぼくは、お前に人間を連れて来いって命じたのに――どういうこと?しかも、僕好みのエルフじゃなくて野蛮そうなエルフしかいないじゃないか……」
「……申し訳ありません。少し計画が狂ってしまったようです。しかし、必ずやご主人様の望みを叶えますので再びチャンスをくださいませ」
その影はグッタリとしたナギとサンを見た途端、顔を真っ赤にしながら、しもべへと喚き立てる。従順なしもべは主人に対する不満を顔に出さずに頭を下げ、冷静な口調で己の主人である影へと謝罪する。
「……今度こそ失敗しないでよ。もしも、失敗したら……その時は――分かってるよね?」
「……はい、分かっております」
すると、今まで喚き立てていた影はフッと浮かべ、チラッと城下町の方を再び見下ろす。そんな気紛れな主人に対して嫌そうな表情を浮かべるでもなく従順なしもべは――ただ淡々と答えるのだった。
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