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~城下町にて~
※ ※ ※
次に、目を覚ました時――僕は見知らぬ場所でボーッと突っ立っていた。
ハッと我にかえって辺りをキョロキョロと見渡してみるが周りは夜の闇に包まれてシーンと静まりかえっている。虫の音色すら聞こえない程の不気味な静けさだ。
それどころか、辺りには誰かがいる気配すらなく、ただひとり――僕がボーッとしたまま突っ立っているのだ。もちろん、仲間であるナギやサン――それに、誠やミストの姿も見えない。
ただ、フィーピーというピクシーに導かれて女の子の家に招かれた事と誠とミストが女の子から勧められるままにお酒をたらふく飲んで酔いつぶれたところまでは覚えている。
しかし、その後の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまったかのように、どうしても思い出せない。
――ギィィィーン……ゴォォォーン……
――ガァァァ―ン……ゴォ―ン
――ギィィィ―ン……ゴォォォーン
――ガァァァ―ン……ゴォ―ン
「な、なに……この……不快な音!!?」
急に僕の目の前にそびえ立っている城のような建物から周囲に響き渡る程の不快な音が聞こえてきて咄嗟に耳を塞ぐ。
この不快な音をうまく表現できないが、まるで黒板に爪を立てて引っ掻いた時のような精神的に不快感を覚えるような音が尚も僕の耳の中に入ってくるのだ。
そして、その不快な音から逃れるために必死で両耳を抑えていたため背後から近付いてくる一つの影に気付く筈もなく――僕は真後ろから何か硬い鈍器のようなもので後頭部を殴られてしまい再び意識を失ってしまうのだった。
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