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ようこそ、呪われた城へ②

「お目覚めかな……優太くん?」 「…………っ……!!?」 唐突に誰かから話しかけられ、僕は心臓が止まってしまうのではないかと思う程、ドキッとして慌てて声をかけられた方向へと目線を向ける。 そこにはニヤニヤと笑みを浮かべながら僕を見つめてくる男がいる。パッと見た感じでは――年齢は僕や誠と、そう変わらないように思える若い男だ。 その男がニヤニヤと笑みを浮かべたまま僕の方へと寄ってきたかと思うと、急に両手を強い力で掴まれてしまい――僕は抵抗すらする間もなく強引にベッドへと押し倒されてしまうのだった。 僕を強引にベッドへと押し倒してきた男を間近で見て……気付いた事がある。 ――僕は、此処に連れて来られる前から……この若い男を見た事があるような気がするのだ。 「君は――誰!?それに、どうして僕をこんな場所に連れて来たの!?」 「ぼくが何者なのか、とか……ぼくが君を此処に連れて来た理由――とか……そんな事は今の優太くんにとって重要な事じゃない。それよりも、ほら……あれ、見てみなよ?」 ふいに、若い男は僕の体の上から身を引くと相変わらずニヤニヤと笑ったまま――とある場所を指差すのだ。僕がじっと目を凝らしながら指差された場所を見つめると誰かが頑丈そうな檻の中に閉じ込められているのが分かった。 「あの野蛮そうなエルフ達――君のお仲間でしょ?ぼくは――ずっと君達を見ていたから……それくらいは分かるよ」 「ナ、ナギ……それに――サンまで!?二人共……怪我してるっ……早く……助けないと……!!」 檻の中に閉じ込められているのが、ワーグの群れに襲われて体中が血まみれになってグッタリしているナギとサンだと気付いた僕は急いでベッドから身を起こしてから慌てて檻の方へと近寄ろうとしてみる。 ――しかし、 「あの野蛮そうなエルフ達を助けたいのなら――ぼくの言う事を聞いてよ。つまり――君は、ぼくの忠実な奴隷になるんだよ。そうじゃなきゃ、ぼくはあのエルフ達を助けない。さあ、どうするのかな……小柳優太くん?」 「な、何で……僕の名前を知っているの?」 僕は急いでナギとサンが閉じ込められている檻の方へと近付こうとしたが、若い男からグイッと腕を強く掴まれてしまい、再びベッドへと引き戻されてしまう。 若い男から低い声で耳元へ囁かれた僕は怪訝そうに男へと尋ねる。僕のフルネームを知っているのは――ダイイチキュウの学校にいた人物や親交のあった人しかいないからだ。 すると、若い男は動揺しきった様子の僕を嘲笑うかのようにいやらしい笑みを浮かべながら――ある提案をしてくる。 「ぼくの名前は――引田護(ひきたまもる)……そうだ、せっかくだからゲームをしてみない?ぼくの名前以外で……君がぼくを思い出せたら野蛮なエルフ達を解放してあげる。問題の内容は、勿論だけど……ぼくが決める。それと、君が……もしも、ぼくが出した問題に答えられなければ……その都度、命令聞いてもらうからね……わかったかな、優太くん?ああ、ちなみに君に拒否権はないよ……」 ふと、檻の側に引田と名乗った若い男以外の人物がいた事に気付く。 そして、その人物は引田が顎をしゃくりあげた途端に細長い剣を構えると――その鋭い切っ先を檻の中にいるナギとサンへと、そのまま突き刺しかねない勢いで向けるのだった。

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