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~城の呪い~

※ ※ ※ ※ 「……はぁっ……はっ……!!」 ナギが部屋の扉を壊してくれたおかげで引田とライムスの魔の手から逃れは僕は、檻の中に閉じ込められたままのナギとサンを見捨てた事からくる不甲斐なさから、身を引き裂かれてしまいそうな程に悔しい思いを抱いてしまう。 しかし、この異様な空気に覆われている奇怪な城から逃れるために――ひたすら、一目散に城の中を駆けて行く。己の勘だけを頼りに薄暗い城の中を無我夢中で走ると――目の前に石の階段がある事に気付く。その階段を急ぎ足で駆け降りて行くと様々な絵画が壁に掛けられている広い場所に着いた。 ――おそらく、此処は奇怪な城のホールなのだろう。 《黄金の王冠を被って誇らしげに笑みを浮かべている男の人の絵画》 《肩くらいまでのウェーブがかった金髪と青い瞳をもつ美しい天使のような女性と――その美しい女性から抱き抱えられて幸せそうに微笑ゆでいる金髪碧眼の小さな女の子の絵画》 ――そして、 《どことなく憂いをおびた表情を浮かべている黒髪の男の人の絵画》 様々な絵画が壁に掛けられている中で――僕は一つ不思議に思った。 王冠を被った男の人・肩くらいまでのウェーブがかった金髪の美しい女性・美しい女性から抱き抱えられている金髪碧眼の小さな女の子・三人とは別に個別に一人だけ描かれている憂いをおびた表情の男の人の絵画の下には、それぞれ【●●・クロフォード】と書かれている。 だけど、おそらくは――それぞれの人物の名前が書かれている●●という部分は何かで削られたのか、乱雑に消されてしまっていて読めないのだ。 しかも――【クロフォード家の家族みんなで】と題名が掲げられている絵画には、先程の王冠を被って誇らしげに笑みを浮かべている男の人や、美しいウェーブがかった髪を持つ金髪の女性――それに女性から大切そうに抱えられている金髪碧眼の小さな女の子は描かれているというのに――何故か、憂いをおびた表情を浮かべる黒髪の男の人だけが描かれていないのだ。 その事が、妙に気になってしまう僕なのだけれど早めに城の外へ出て、誰かに助けを求めなければいけないと思い直すと――そのまま、急いで外へと出るために出口の扉に向かって必死で走っていく。 そして、やっとの思いで出口へと辿り着いて扉を開けようと手を伸ばした時――、 「~♪♪♪♪~♪~♪~♪♪~♪♪~♪♪~」 どことなく哀しげな旋律を奏でるオルゴールの音が――扉まで辿り着いて油断しきっている僕の耳へと入ってくるのだ。 それだけでなく、オルゴールの哀しげな音を聞いている内に――僕の意思に反してポロポロと涙を溢れさせてしまう。 次の瞬間、今まで確かに誰もいなかったはずなのに――まるで、誰かに後ろから抱き締められているような気がする。 しかも――体が燃えるように熱い。 そのあまりにも不可解な出来事と体が燃えるように熱くなったせいで――僕は耐えきれない程の目眩を起こしてその場に倒れ込んでしまい、思わずギュッと目を固く瞑ってしまう。 ※ ※ ※ ※ 「やあ……お帰り、優太くん?これで分かったよね~……君はこの城の呪いと、ぼくから逃れる事は出来ないんだよ」 「……なっ……何で……っ……!?」 城の出口に届くあの少しという場所にポツリと床に置かれていた哀しげな旋律を奏でるオルゴールの音を聞いた後、そのまま強烈な目眩に襲われたせいで倒れ込んでしまった僕が、目を開けた時――ナギの捨て身の爆発魔法のおかげで奇怪な城の出口付近まで走って逃げたはずの僕は再びニヤニヤと下品に笑っている引田にベッド上で押し倒されているという訳の分からない状況にみまわれてしまい混乱してしまうのだった。

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