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~呪われた城下町にて②~ ※誠視点

「あのエルフの子が――この城下町は呪われているって言ってたけど……ミストには普通にしか見えないんだけど――」 「……やっぱり、お前にもそう見えるのか?俺もこの城下町が呪われているなんて……信じられない……」 ――ギィィィーン……ゴォォォ―ン、 ――ガァァァ―ン……ゴォォォ―ン…… 俺とミストが訝しげな表情を浮かべながら話していると、ふいにすぐ近くにそびえ立つ古そうな城の方から辺り一帯に響き渡る程の大きな鐘の音が聞こえてくる。 まるで、以前の世界にあった学校黒板を爪で思いっきり引っ掻いた時のような精神的に嫌悪感を抱く不快な鐘の音だったため――慌てて両手で必死に耳を抑えてしまう。 ――その時、ふいに辺りに広がる光景に違和感を覚える。 つい先程まで陽気に笑いながら買い物をしていた女の人や、仲間らと共に騒ぐ酔っぱらいの男――それにボールを蹴りながら愉快げに遊んでいた子供達が不快な鐘の音が鳴り響いた途端に何かに怯えているような恐ろしげな表情を浮かると、フッ……と一瞬でその場から姿を消してしまったのだ。 「あ、あれ……今まで――確かに、皆いたはずなのに……何で急に姿が消えちゃったの!?」 「こ、これは……これは……一体、どういう事だ!?」 ――ギィィィーン……ゴォォォ―ン、 ――ガァァァ―ン……ゴォォォ―ン…… あまりにも不可解な事が唐突に起きたせいで訝しげな表情を浮かべながら身動きすら取れずに慌てふためく俺とミストだったが、再び古い城の方から黒板を引っ掻くような不快な鐘の音が聞こえてきたため――咄嗟に両手で耳を覆った。 すると、再び城の方から聞こえてきた鐘の音に呼応するかのように、俺達が最初に不快な鐘の音を聞く前にこの目で見た陽気な様子で買い物をする女の人や、酔っぱらいの男――ボールで遊ぶ子供たちの姿が再び、フッ……と一瞬で目の前に現れるのだ。 「と、とりあえず……訳が分からないけど」……彼らにユウタとナギ達を見たかどうか聞いてまようよ?もしかしたら、何か分かるかも……」 「――ああ、確かに……その通りだな」 先程から不可解な出来事に遭遇したせいで明らかに動揺しつつも、このまま何もしないのも納得いかないと感じたのか――ミストが再び俺達の前に姿を現した彼らにゆっくりと近付こうとする。 ――すると、 「無駄だ……ここのヤツらにそんな事を言った所で――時間の無駄だ。それよりも、さっさと呪われた城へ行け――」 ふいに、何処かで聞いた事があるような低い男の声が聞こえてきて、俺は慌てて声が聞こえきた方へと目線を向ける。 其処には――いつだったか、ウィリアムという男から招待された風呂屋で出会い、ふてぶてしい態度で優太にぶつかった金髪の男が、素っ気ない表情を浮かべて此方を睨み付けつつ立っていたのだった。

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