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呪われた城のホールにて③

「まったく……君もしつこいよね~。いい加減……こんな呪われた城下町や城を新しい主である――ぼくの手から取り戻そうとするのをキッパリと諦めて――あの少年エルフと一緒に村でヒッソリと暮らしていればいいのに……」 「現に――この城内をさ迷っている奴らは正統な後継者である君じゃなくて――よそ者のぼくを選んだんだからさ~。ほら……奴らも君のしつこさに呆れて笑っているよ……聞こえる?」 引田が檻の中に閉じ込められている誠やミストの様子を確認する前に――金髪の男の人の怒りを、わざわざ刺激させようとしているのかと思う程に余裕そうな笑みを浮かべながら誇らしげに言い放つ。 そして今更なのだけれど、僕は引田に対して怒りを露にしているその金髪の男の人が前にウィリアムさんに招待された風呂屋でぶつかってしまった人だ――という事に気付いたのだ。 ――クスッ……クス、クス……キャハハッ……!! ――フフッ……キャハハ……!! ――ハハッ……ハハハッ……アハハ……!! ふいに、周りから誰か――おそらくは、何人もの子供や女の人や男の人の笑い声が響き渡る。 引田が先程言っていた――この城の中をさ迷っている奴らとやらなのだろうか? フッ……と気が付けば鳥かごのように大きな四角い檻の周りを取り囲むように――まるで貴族のような格好をしている大勢の存在が高らかな笑い声をあげているのだ。 ――しかし、今まで其処には誰もいなかった筈なのに。 その笑い声をあげて貴族のような格好をしている謎の存在達は急に僕らの前に現れたのだ。しかも、普通の人間とは――明らかに違う所がある。 笑い声をあげて貴族のような格好をしている謎の存在のその体は全体がボンヤリとした緑色の揺らめく炎のような光で包まれ、恐ろしい事にその頭部は――皆が皆、ダイイチキュウという前の世界の学校の理科室に飾られていた骨格標本のような骸骨なのだ。 「ああ、そうそう……言っておくけど――もしも此処から逃げ出そうとしたり変な事をしたら……この【さまよう貴族の魂】が君らの魂を吸いとっちゃうからね?命が惜しいなら無駄な抵抗はしないことだよ♪さて、木下誠と一緒に檻に閉じ込められた子は……どんな子なのかな~?」 引田が愉快そうに口角をあげて笑みを浮かべながら、鳥かごのように大きな檻の中を確認しようと興味津々で覗き込もうと身を屈める。 「あれ、君も――エルフなんだ……ああ、あの野蛮そうなエルフの仲間か……って……なかなか可愛いじゃないか。もし、君も……これからの優太くんと同じように――ぼくの言いなりになるなら……君だけは助けてあげても……いい……っ……」 どうやら、引田は一目見てミストを気に入ったらしい。 檻の中の誠には目もくれずに、引田は先程――僕に向けてきたような嫌らしい目付きで値踏みするかのようにジッとミストを見つめた後、檻の僅かな隙間から手を伸ばして彼の頬に触れようとしてくる。 ――バシッ!! その直後、城のホール内に伸ばしてきた引田の手を緑が振り払い、それだけでなく呆気にとらわれて呆然としている彼の頬に平手打ちを食らわす乾いた音が響き渡るのだった。

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