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思わぬ来訪者たち①
「汚い手で――ミストに触らないでっ……!!」
「こ、この……エルフの分際で――よくも……この城の主である、ぼくの顔を叩いたね!?だけど……強気な所もそれはそれで魅力的だ。こうなったら、優太くんは勿論のこと――何が何でも君をぼくの物にしてあげるよ……っ……」
【クロフォード家の現主人が命ずる……この城に捕らえられた《さまよえる貴族の魂》よ――このミストなるエルフの魂を吸いとるがいい……ただし、命までら奪うな】
引田は檻の中に閉じ込められているミストから頬を平手打ちされ、プライドを傷付けられたよが余程悔しいのか――怒りで顔を真っ赤にしながら、尚も檻の周りを愉快そうに飛び周る《さまよえる貴族の魂》へと命じる。
すると、楽しげな笑い声を辺りに響かせながら《さまよえる貴族の魂》たちは、檻の柵を難なくすり抜けて、中に閉じ込められているミストの元へと飛んでいき――、
「……やっ…………やめてっ……ミストから離れてったら……!!」
共に檻の中に閉じ込められている誠など見向きもせずに、ミストへと纏わりつく。そして、嫌がれば嫌がる程に彼の体に抱きついたり――中には口付けしようとしている者もいるのだ。
最初こそ必死で嫌がって抵抗し、手を振り回していたり、杖をブンブンと振り回していたが――次第にその些細ともいえる抵抗はなくなっていき、段々と体をガタガタと小刻みに震わせ始めるミスト。
「……さ、さ……むい……さ……むい……さむい……」
「た……す……けて……さ……む……い……」
ミストが体を小刻みにガタガタと震わせながら虚ろな目でブツブツと呟き始め、そろそろ何とかしなければと思った時――、
――ザッ……ザッ……
――ザッ……ザッ……ザッ……
呪われた城の中を、まるで大勢の人々が行進しているかのような音が何処からか聞こえてきた。しかし、おそらく行進している人々の足音は聞こえども姿は見えないため思わず目線だけで辺りの状況を確認してみることにした。
それは、つい先程まで偉そうにしていた引田も同じようで何処から大勢の人々が行進しているような音が聞こえてくるのか理解するために動揺している表情を浮かべつつも僕同様に辺りをキョロキョロと見渡すのだった。
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