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~大好きな君に目覚めのキスを~
「ま、誠……お願い――ナギに……そんな酷い事をするのは……止めてっ……お願いだから――ぶっきらぼうでも優しい誠に……戻って……」
「…………」
嫉妬というドス黒い負の感情に捕らわれて正気を失っている今の誠には、僕がどんなに悲痛そうに訴えかけた所で――無駄だと悟る。
普段の優しい誠じゃない異常ともいえる今の彼には――僕の存在など、まるで見えていないかのように僕を無視してくるからだ。
――それなら、僕にも考えがある。
言葉が今の誠に届かないのなら、行動で僕の想いを示せばいいだけだ。
僕は未だにナギの首をギリギリと絞めあげている誠の背後へと回り込むと、そのまま彼の体をギュッと抱き締めた。
そして、怒りによる興奮からなのか、僅かに勃ち上がっている誠の下半身のある部分にソッと手を回すと、そのまま――たどたどしい手つきでズボンの上からその部分を擦ってみる。
「……うっ………!?」
すると――誠の体がビクッと震え、ナギの首を絞めていた彼の手の力が緩み始める。
正直なところ、正気なままであるサンや金髪の男の人の前で、こんな卑猥な事をするのは僕としては死ぬほど恥ずかしいのだが嫉妬という負の感情に支配されて操られてしまっている誠を正気に戻させるためには――このくらいしなければいけない、と感じたため仕方がないと割りきるしかないのだ。
「あっ……んっ……ゆ、ゆ……う……た……っ……」
ふいに、息を荒げて喘ぎ声をあげながら誠が恍惚そうな表情を浮かべつつ、僕の方へと振り向いた。その時、首を絞め上げられていたナギの体を誠が遂に離したため――自然とナギの体が大理石の床へと叩きつけられる。
(よし――今がチャンスだ……)
そう思った僕は――此方へと振り向いた誠をグイッと半ば強引に引き寄せると、そのまま少しだけ乱暴に彼の唇に僕の唇を重ねる。
「んんっ………んっ……ふっ……」
「んっ……んむっ……」
――単なる優しいだけのキスじゃない。
僕と誠の舌を互いに絡め合わせる――深い、深いキスなのだ。
流石に息が苦しくなったので、名残惜しいものの――僕は誠の唇からソッと自分の唇を離した。
銀の糸が――僕達二人を結ぶ。
「ゆ、優太……これは……一体、どういう事だ?どうして、こんな……っ……」
「……ひみつ!!」
誠の唇から自分の唇を離してから少し経った後、誠が顔を赤らめながら己の下半身を抑えつつ不思議そうに僕へと尋ねてきたため、クスッと笑ってから――正気に戻った優しい誠へと答えるのだった。
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