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リリーの記憶②
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ふいに――場面が変わる。
「リアムお兄様……今夜も――あの人……いえ、お父様のお部屋に行かれるの?今宵はリリーと一緒に寝るって……約束してくれたのに……」
「リリー……ごめんね。僕も――本当はリリーと一緒に寝たいんだ。でも、お父様の命令は……僕にとっては絶対だから。また今度、リリーた寝てあげるよ」
リリーという女の子の姿となっている僕は寂しからかのか――ひたすらに涙を溢しながら切なげな表情を向けてくるリアムという黒髪の青年にギュッと抱きついていた。すると、彼は――泣かないでくれといわんばかりに頭をその大きくて温かい手で撫でてくれるのだ。
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またしても――場面が変わる。
今度は、とある部屋の扉の前で立ち尽くしている。リリーという女の子の姿(立場)となっている僕の心をモヤモヤとした不安が覆い尽くしている。そして、勇気を振り絞り――少しだけ開いている扉の隙間からコッソリと部屋の中の様子を覗くのだ。
「……お、お止め下さい――お父様。こんな、こんな……おぞましい行為……僕には耐えられません」
「我の宝であるリアムよ……お前が嫌というのなら……他の者にこの夜の伽をしてやっても良いのだぞ?そうだな……あの、おてんば娘のリリーにもしてやろうか?それとも、お前が好いている執事にやらせてもよいな……そうすれば、あのじゃじゃ馬娘のリリーとて大人しくなるに違いない……」
そこで、リリーという女の子の姿となっている僕は――とんでもない光景を目の当たりにする。
王冠を被っていた偉そうにしていた金髪の男の人が――ベッドの上に、素っ裸となっているリアムという青年を横たわらせ――自分のコレクションであろう自慢のヘビ達を象牙のように白く滑らかなリアムの肌へと這わせている。いや、それだけでなく――自らも手でリアムの肌を撫でたり、舌を這わせたりと卑猥な事をしているのだ。その度に、リアムの体が小刻みにビクッ――ビクッと震える。
「……ひっ……あっ……んっ……ううっ……リリーにだけは……お止め下さいませ。このような事をしたら……リリーはおかしくなってしまいます――」
「ふん…………ならば、おてんば娘のリリーの代わりに――お前が辛抱するしかなかろう。それにしても、とても……良い顔をしている。リアムよ……やはり、お前は――我の宝だ」
そう言いながら、厭らしい笑みを浮かべつつリアムという黒髪の青年の上で腰を激しく上下させ続ける王冠を被っている金髪の男を――リリーという女の子の姿になっている無力な僕は悔しげに見つめる事しか出来ないのだった。
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