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デュラハン・スライム①

僕らの前に急に現れ、憎悪に満ちた男の低い声を耳にした僕らは【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大な黒いヘビの姿を目の当たりにした時と同様に慌てふためいている様子で声が聞こえてきた方向へと目を向ける。 そこには【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大な黒いヘビよりも――もっと驚愕してしまうような容姿をしている男(声だけで判断した)が立っているのだ。 ――背丈は普通の男子高校生よりも少し低めの僕と同じくらいだろう。 ――ホールにかけられているリアムという黒髪の青年が描かれている絵画と同じエメラルドグリーンの高級感溢れる衣服を身に纏っている。 ――しかし、首がない。いや、正確にはその得たいの知れない男は己の首を自分の左手で持っているのだ。そして、本来ならば首があるはずの場所は黒いモヤがかかっているような状態となっている。 「お、おい……ライムス……お前、一体……どうしちゃったんだよ!?なんで――急に……こんな訳の分からない姿に……っ……」 僕らがその異常な姿をしている男の姿を呆然と見つめる事しか出来なかった時、ふいに青ざめて血の引くような表情を浮かべている引田の口から信じられない言葉が出てきた。 「ラ、ライムス……って……確か、さっき僕にイタズラしてきたスライムの……って事は、まさか――あの謎の男の人は――元々はライムスだったのに……そこから、あんな風に変化しちゃったって事?」 「ああ、確かに……優太くんの言う通り――さっきまでは確かにライムスだった。でも、お前達が――どっかに行っていた間に……ライムスが現れたかと思ったら急に【さまよえる貴族の魂】を操り出して……それで【さまよえる貴族の魂】もライムスも……あんな訳の分からない姿になったんだ……お願いだ――ぼくの言葉を信じてくれ!!」 「ひ、引田……それは――本当なんだよね?嘘、なんかじゃ……ないんだよね?」 正直なところ、僕は引田のその言葉を信じてまいいのかと迷ってしまう。 しかし、その半面で――今の引田は嘘を言っていないと思ってしまう自分も確かに存在している――と思うのだった。

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