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デュラハン・スライム③
「おい、優太……っ……優太――こっちを向け!!いいか……お前は優太という名前で――俺の大切な……世界で一番大好きな恋人だ。冷静になれ――そして、共に……この城の呪いを解くんだ……分かったな!?」
「く、苦しい……苦しいよ……誠……」
誠が我を失っていた僕の体を――ギュウッと強く抱き締めて耳元で囁いてくれた途端に――先程まで僕の心を鷲掴みにして支配していた憐れみの感情が最初から存在していなかったかのように消え去ったのだ。
「おいおい――てめえら、イチャイチャしてる場合じゃねえだろうが……とりあえず、あの【さまよえる貴族の魂】の結合体とかいうふざけた存在をどうにかしねえと……くそっ――いちかばちか……やってみるしかねえ!!」
少しだけ怒ったような様子のナギの言葉を聞いた僕と誠は慌ててパッと体を離す。僕と誠にイチャイチャするなと怒りの声をあげた後――ナギはおもむろに懐から短剣を取り出すと、ライムスに憑依したリアムという怨念の異様な存在へ向かって短剣を投げる。
『――それでね、優太……デュラハンっていうのはね……パッと見は普通の人間の姿をしているんだけど――よく見ると首から上の部分が黒いモヤがかっているような感じになってて……胴体から離れている首は自分の手で持ってるんだよ』
『首は胴体から切り離されているけど首をくっつける事も出来るんだって。何だか凄く格好いいよね……まあ、デュラハンは自分にとって大切な存在に対して危害を加えようとする相手に死を運ぶみたいだから……怖い存在でもあるんだけどね――』
僕はライムスに憑依したリアムという黒髪の青年の怨念と化した存在へと勢いよく短剣を投げたナギを見つめつつ――想太が、かつて僕に教えてくれた言葉をフッ……と思い出す。
ライムスに憑依したリアムという黒髪の青年の怨念の異様な姿は――かつて、想太が僕に見せてくれたお気に入りの本の中に描かれていた【デュラハン】という魔物にソックリなのだ。
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