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共に地下へ① ※誠視点

◇ ◇ ◇ あれから、俺は優太の手を半ば強引に引っ張っていき――ミストが導いてくれた地下へと続く逃げ道を必死で駆けて行く。そして、なんとか優太と共に地下へと続いている石造りの階段を必死で降りて行くのだ。 ――ゴォォォォッ……ゴォォ~ッ…… 城のホールでは相変わらず【さまよえる貴族の魂】の結合体とやらの巨大な黒いヘビが吐き出す黒炎によってミスト達エルフが囲まれており、仲間となったヤツらを見捨てるようで心苦しくなったものの、魔物との戦闘に慣れていない俺と優太よりも比較的――戦闘をし慣れているミスト達を信頼してホール内で好き勝手している【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビの始末を任せた方が良いと判断したのだ。 (それに……ミストが言っていたように――俺達には城の呪いを完全に解く方法を探すという役目がある……城の呪いを完全に解く方法さえ見つけてそれを実行すれば――おそらくはあの忌々しいヘビも……ライムスとかいうのに憑依している気味の悪い存在も……消え去るはず……) 「ねえ……誠――さっきも思ったけどここ……暗くて歩きにくいよね。何か、明かりになりそうな物って無いかな?」 ふと、そんな事を俺が思っていると――背後から優太が俺の制服の裾をギュッと握りながら不安げな様子で問いかけてくる。 確かに城の地下通路は暗く、このまま明かりも無しに歩みを進めて行くには不安がある。先程は、ミストが発光魔法を駆使してくれていたおかげでどうにかなったが――彼がいない今は俺と優太だけでこのピンチをなんとかしなければならないのだ。 ――コツン……ッ…… 明かりになりそうな物がないか、と辺りを探っていると――ふいに何かが足元に当たった事に気が付いた俺は慎重にソレを拾いあげる。やけに慎重になるのは、このような怨念に囚われえいる場所なので――トラップのような物があってもおかしくはないと考えたからだ。 幸運な事に――ソレを拾いあげたからといって飛び道具のような物が飛んでくる事や落とし穴に嵌まるような事はなかった。 おそらく――以前にこの城で暮らしていた人物が使っていた物なのだろう――。先が短くなりかけている蝋燭が忘れ去られているかのように――無造作に石の床に転がっていたのだ。 「よし……この蝋燭に火をつければ――なんとかなるだろう。少なくとも、明かりがないよりは幾分マシだ……」 「で、でも――蝋燭があっても……火をつけるものがなければ明るくならないよ……誠、何か……火が着くような物は持ってる?」 蝋燭を拾いあげてホッとしていた俺だったが――確かに優太が言うように火が着く物を持っていなければ、どうしようもない。 (何か……何か――ないのか……火が着く物――待てよ、確か――かなり前に入れっぱなしになっていて、すっかり忘れていた……アレがあったような――) 俺は、フッ……とある事を思い出してゴソゴソと制服のズボンのポケットの中を探る。そのズボンのポケットの中には――以前、他のクラスの誰かから身体検査で引っ掛かると厄介だから預かっててくれと半ば強引に入れられて……忘れ去っていたライターがあるのだった。

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