135 / 713
ミスト達の闘い④ ※ミスト視点
ミストは引田を守るために咄嗟に杖を構え、詠唱していた事に対して自身でも驚きを隠せなかった。何故なら、頭で考えるよりも先に半ば無意識の内に水の魔法の詠唱をしていたからだ。
すると、先程までは比較的――余裕そうな態度をとっていた【リアムという青年の怨念】に憑依されたデュラハンだったが、ミストが詠唱を唱えて水球を杖の先から放った途端に少しだけ怯むような素振りを見せた。
――ミストが【リアムという青年の怨念】に憑依されたデュラハンに向かって放たれた複数の水球は、あと少しで命中すると言ったところで【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビに吐かれた黒炎によって吹き飛ばされてしまう。
しかし――【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビも【リアムという青年の怨念】に憑依されたデュラハンと同じようにミストが水の魔法を唱えた途端に怯んだのを見逃さなかった。
(やっぱり……あの厄介な巨大なヘビを――先に何とかしなくちゃ……もしかしたら……ヤツらは水の魔法に弱いのかも……でも、そろそろ――魔力が足りない……ど、どうすれば……っ……)
「よし……っ……優太――作戦通りに行くぞ!!」
「わ、分かったよ……誠――でも、本当に良いんだね!?」
ミストがこれ以上、引田を巨大なヘビとデュラハンから攻撃させまい――と心の中で、これからの対処法をどうするのか必死で考えていると――ふいに、黒炎に取り囲まれて入り口すらハッキリとは見えない地下へと続く階段のある方向からユウタとマコトの聞き慣れた声が聞こえてくる。
――ゴォォォォッ…………ゴォォッ……
相変わらず地下へと続く階段の方は勢いよく燃える黒炎に取り囲まれていたが、急に黒炎の中を通ってマコトがミスト達のいる内側へと駆けて来たかと思うと炎の外側からコロコロと床を転がってきた瓶のような物を拾い上げ――、
――バシャッ……
体を黒炎に包まれている誠が瓶に入っている赤い液体を【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビと【リアムという青年の怨念】に憑依されているデュラハンに向かって勢いよくかけるのだ。
すると――【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビは身を悶えさせながら黒い煙を吐き続け――最終的にはその場から溶けるようにして消え去るのだった。
それに伴い、【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビが消え去った事によりミスト達を取り囲んでいた黒炎も少しずつ時間をかけて徐々に消えていくのだった。
ともだちにシェアしよう!