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執事と妹の想い①

「ち、ちょっと……マコト――大丈夫!?」 「ミスト……あまり動かさない方がいい。見たところ、火傷は酷いものの――命に影響はなさそうだ。おまえの魔力が溜まり次第、回復してやれ……」 「おい、あの首なし野郎――まだ俺様達を狙ってるみたいだぜ?あの気味の悪いヘビは消え去ったみてえだが……まだまだ油断すんなって事だな。」 ミストか身を呈して黒炎の内側へと飛び込んだせいで火傷してしまった誠の方へ慌てて駆け寄る。そして、ぐったりとしている誠を必死で揺すり起こそうとしていたミストを冷静な口調でサンが止めると――ナギはミストが唱えた水の魔法を命中させられた事により弱った状態ではあるが巨大なヘビのように消え去る事はなかった【リアムという青年の怨念】に憑依されているデュラハン(操られたライムス)を見つめながら忌々しく呟くのだった。 ―――――――――――――――――――――――――― 暗い地下の中で、僕は誠が見つけ出した樽に入っている赤い液体を周りに無造作に転がっていたままの瓶へと入れた。 ――誠が言うには、その樽の中に入っているのは毒入りの赤ワイン……らしい。 とにかく毒入りのワインをこのようにして手に入れた僕と誠は共に城のホールへと戻り、二人で話し合った作戦通りに誠は黒炎の内側へと身を呈して飛び込んだ。そして、僕は炎の中へと飛び込んだ誠に向かって毒入りのワインを投げ入れるのだ。 誠が自らの身を呈してくれた事もあり、見事に【さまよえる貴族の魂】の結合体である巨大なヘビを消し去る事と【リアムという青年の怨念】に憑依されたデュラハンを弱体化させる事が出来るのだった。 僅かな安堵も束の間――僕の身に再び激しい目眩が起こり、そのまま僕としての意識がフッ……と途絶えてしまう。 【ああ……愛する我が主――そのような痛ましいお姿になられて。貴方様の最愛なる妹のリリー様も……悲しんでおられます。もう――復讐などという不毛な行為は止めにしましょう……】 【復讐などしても――有益な物は何も生み出さない……ましてや、貴方様の子孫である存在や無関係の方を巻き込んでまで――復讐などという事をしても貴方様の魂が益々汚れてしまうだけでございます……さあ、ワタシやリリー様と共に……いるべき場へと戻り――今度こそ安らかに眠りましょう……】 徐々に途絶えていく意識の中で――僕は誰かを熱心に説得しているかのような男の人の声を自分の口から聞いている――ような気がしたのだった。

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